開高健著「戦場の博物誌」

実際の文字数と関係なく密度を感じる作品集。
表題作は、博物誌という名前の通り、ハゲタカやカモシダなど、細かい章立てで語っています。当然、一編はさほど長くないはずですが、凄い長編大作を読んでいるような気がしました。
逆に、米軍曹長の休暇に付き合う「兵士の報酬」や、正月休戦を描いた「岸辺の祭り」は、東アジアにおける洗面器の使われかたを語る「洗面器の唄」より長文なのに、短編だと感じました。描いているテーマと地域の広さの差なのでしょうか。

小説ということになっていますが、ルポルタージュのようでもあり、非常に不思議な読書体験です。
最終話「玉、砕ける」以外は、死が日常の中に組み込まれている戦地の空気感があります。受け手の私はそこまで器がないので、巧く飲み込めないところもありました。また、語り手となる主人公達は、今風にまとめると戦場で「自分探し」をしているように見えて、共感もできませんでした。

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