藤野恵美著「初恋料理教室」

様々理由で料理教室に通う、四人の男性の中編集。
表紙の若い女性が料理教室の先生か、通っている生徒か、と思いながら読み始めたら、先生は六十を超えているというご婦人だし、生徒は全員男なので、「エッ!?」と思いました(笑)。
愛子先生の若い頃のイメージなのでしょうが、残念ながら、個性豊かな生徒たちに比べると先生は存在感が薄かったです。料理教室を開いているバックボーンもまったく気にならなかったから、終章で明かされる過去にも感銘は受けず、読了後の締まりが今ひとつでした。

とはいえ作品自体は、教室で作られる料理と同じく「丁寧な仕事」という印象を抱きました。
料理の描写が細かいのは当然だとしても、料理のコツが随所に書き込まれていて、なんだか真面目に料理をしたくなってきます。巻末にレシピが載っているのも嬉しいところ。
料理以外の事象も、建築家の真渕の視点だと建物の描写が多いなど、キャラクターごとに注視点が違うように感じました。
また、舞台設定も活きていて、食材、言葉、土地、人々の考えかたから京都を感じられました。

一冊でキチンと完結はしているけれど、若干、想像の余地を残した作りなので、続編も書けそうな雰囲気。少し期待します。

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