柚木麻子著「本屋さんのダイアナ」

【あらすじ】
母子家庭で育った大穴(ダイアナ)は、小学校三年生の春、お嬢さん育ちの同級生・彩子と、本好きの共通項から友だちになる。ケバケバしい自宅を嫌い、彩子の良家の生活に憧れるダイアナに対し、質実剛健な家庭の窮屈さから、自由奔放に見えるダイアナの生活に憧れる彩子。しかし進学の中で二人はすれ違い、長い仲違いをしてしまうーー

思春期以降の女性が経験するであろう様々な困難、コンプレックス、性への恐れや、女として生きることをどう受け入れるかを描いた「大人女性のための赤毛のアン」。ヒリヒリするような人間関係と容赦ない挫折を味わっていくので、辛い局面もありました。
しかし、最後は「自分を縛る呪いは、自分自身にしか解けない」というテーマに集約され、ホッとする終わり。
立場の違うダイアナと彩子のダブルヒロイン構成も良かったです。幼少期、思春期、大人へと変わっていく心情が細かに書かれています。二人の視点は「あと少しこのエピソードを」と感じる良いところで切り替わるので、どんどん先を読んでしまいました。

ただ、読書中は夢中で読んだのですが、「ヤリサー」の件で気分が悪かったのと、肝心のダイアナの両親を肯定することができず、私には合いませんでした。
母親(ティアラ)は、実態は善良且つ賢い人として描かれています。しかしどんな理由があれ、娘に「大穴」と付ける判断は酷いと思います。また、自分の母親を悲しませたのも事実です。
父親は、人間的に嫌い。こういう人物と話しているとイライラするので、なるべく関わりたくないです。

ヒロインたちが本好きゆえ、数多く名作の話が登場するのは楽しかったです。特に、彩子から「危険な関係」の話が出たときは、驚くと同時に嬉しくなりました。彩子の大学生活は、まさに「危険な関係」のセシルやトゥールベル夫人を思わせます。サガンの「悲しみよこんにちは」も、仏文学だから敬遠していたのですが、読んでみようかなと思わされました。

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