文京シビックホールにて、宝塚月組「アーサー王伝説」11:00回を観劇。
宝塚の興行としては珍しい、東京公演から幕開けのため、本日が公演2日目です。
大好きなミュージカル「1789」と同じくドーヴ・アチア氏によるフレンチ・ミュージカルということで、とても期待していました。しかし本作は、もう一度観たいとまでは思えず、少し残念。
詰まらなかったとまでは言いませんが、ごく普通の宝塚らしいミュージカル演出になっていて、本家仏版にあるだろう「スペクタキュル」の熱狂はなかったです。
最大の期待箇所だった音楽は、ケルト風の部分があったり独特の味はあったけれど、「1789」初見時の「この曲を聴きにもう一度観たい」という衝撃は得られませんでした。
曲の終わりが分かり難い箇所があったり、2日目ということで、拍手を入れられず、客席が戸惑う雰囲気も感じました。
シナリオに関しては、仏版に元々ないのか、再現不能と考え割愛したのか分かりませんが、大規模な戦争シーンはありません。グィネヴィアを巡る恋愛関係が中心で、そこにモーガンの復讐が絡むという作り。ランスロットの聖杯探しはあるけれど、荷車の下りだけで、実際の探索は描かれません。
仏ミュージカルは、元々シナリオが雑なので、音楽と演出の力が凄く重要な舞台だと思います。日本版を担当した石田先生が特別悪かったとは思わないけれど、元々の作品の粗を隠して面白く見せることには成功していなかったかな……。
ちなみに、アーサー王が題材でありながら、本作は意外と明るいエンディングを迎えます。しかし火種が残っているので、“「アーサー王伝説2」に続く!!”と「アオリ」を載せたくなりました。
私の体調があまり良くなかったので、舞台から発される熱量をきちんと受け止められなかった部分もあると思います。
また、文京シビックホールという箱にも問題はあったと思います。セリと盆がないのは許容範囲としても、二階席は手摺が非常に邪魔で、私の席の場合、役者が舞台前方に立つと、ちょうど上半身が隠れてしまったのでストレスが溜まりました。音の響きは良かったし、通常の演目からして、元々コンサート向きのホールなのでしょう。
悪い印象から語ってしまいましたが、個々のキャストはとても良かったです。
また、衣装は豪華で宝塚らしい外連味があったし、石田先生が挿入した気がするコミカルな要素も面白かったです。
アーサーがみんなを引っ張るというより、周りに守り立てられた形で王座に座り、物語を通して真の王となっていく筋は、若きトップスターのお披露目らしい良さもありました。「海外ミュージカルの日本初演」という冠を外し、宝塚作品として観れば、十分な出来だったと思います。
以下、キャストごと感想です。
本作がプレ御披露目のアーサー@珠城りょうは、本人から感じる善良さを生かした役作りだったと思います。歌も聴かせました。ただ、ケイやガウェイン等、真摯にアーサーを想う仲間がたくさんいるのに「王の孤独」とか歌ってるんじゃない、と突っ込みたくなったけれど(笑)。
グィネヴィア@愛希れいかは、酷い駄目な女なのですが、可憐で美しく見せるので、3人の男から愛されても仕方ないな、と思わされます。悪意はまったくない、純粋培養の「お姫様」らしさがありました。操り人形のシーンは必見。
驚きの配役だったモーガン@美弥るりかは、元々女を演じても違和感のない外見ですし、毒婦・魔女という印象もピッタリ。ただ、全体的に働き過ぎな気もしました。
ランスロット@朝美絢は、顔に説得力があります! 生真面目な人間をイメージしていたのですが、本作のランスロットは軽率さと恋愛第一主義っぷりに、そういえばフランス人だったなと思いました。
事前に「仏版では人気があるキャラクター」と聞いてしまっていたメリアグランス@輝月ゆうまは、出番も印象も薄くて肩透かしでした。
正直、対決前にもっと強さと因縁が描かれていれば、映える悪役だったと思います。この辺は、番手バランスでモーガンに吸収されてしまったのかな。
私は輝月を良い役者だと思っているのですが、脇を締める実力はあれど、描かれていない部分を魅せる「ハッタリ」は持ち合わせていないのかも知れませんね。この役を演じる彼女からは、主演経験がないという弱点(あるいは主演が回って来なかった理由)を観た気がします。でも回を重ねればもっと大きくなると思うので、期待することは止めません。
マーリン@千海華蘭は、実に巧妙。善良だけれど色々と弱い魔術師マーリンの人間らしさを感じました。アリアンロッド@紫乃小雪との掛け合いは、神と魔術師であったり、お爺ちゃんと孫みたいな雰囲気にもなったり、良い緩急がついていました。
ケイ@佳城葵は、凄く美味しいコミックリリーフという役をきちんと生かし、役者として凄いアピールをしていました。個人的に、オチの種明かしはない方が好きだけど。
円卓の騎士たちは、ガウェイン@紫門ゆりやとレオデグランス公@綾月せりくらいしか脚本上の個性付けがなく、数合わせ扱いだったのですが、ビジュアルに気合いを入れて個性を出していました。
オペラグラスを忘れたため、顔を確認できなかったのですが、刈上げにした髪型はウリエン@貴千碧? 攻めたビジュアルで格好良かったです。