中島京子著「小さいおうち」

これは傑作!と思いながら読み進めました。
戦時中、一般市民の暮らしは明るかった、という描きかたには頬を張られるような衝撃がありました。
戦前から戦中の時代に、田舎から出てきた純朴な少女タキが、小さいけれどモダンなお家で一生懸命働く姿は応援したくなるし、一方、現代パートでのチャキチャキしたお婆ちゃんだけれど、現代っ子の甥とズレ感があるところが面白いです。
奥様は、作中“人から好かれる”と評されていますが、本当にチャーミングに描かれているので、これなら好かれる、と納得しました。

しかし、最終章の存在が、私には少し引っ掛かかりました。最終章をつけず、タキの回顧録としてまとまっていても、隔靴掻痒とはならないと思います。むしろ、最終章によって新しい謎が生まれ、疑問符を付けることになってしまいました。
作品としては、最終章があることで高評価になっているようですが、私は読み終わってスッキリしたい方なので、ここだけ残念でした。
また、巻末の対談が、解釈を特定の方向へ導こうとしているように見えるのも気になりました。

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