蜂谷涼著「月影の道 小説・新島八重」

会津戦争前後から、夫・新島襄の死までの半生を描いた小説。
前半の会津時代の思い出から会津城籠城戦、京都へ辿り着くまでの展開は、濃密で面白かったです。しかし、新島襄と出逢った辺りから、小説というよりエピソードをただ紹介しているだけの内容になってしまったのが残念でした。
例えば姪・久栄の起こした恋愛問題に関する話は、夫への愛についての考えを示すために挿入されたのでしょうけれど、物語として見るとそのエピソードが久栄のその後に影響したわけでもなく、単純に「そんなやりとりをしました」という語りになっているので、淡々と読んでしまいました。

とても惹かれたのは、親友・中野竹子の描きかたです。第一部は死んだ竹子への語りという形で記されていることもあり、八重の非常に濃密な気持ちが表れていましたし、ここでしっかり描かれた竹子の存在感が、最後まで小説を支えていたと思います。
また、会津人としての誇りが強く語られるのと同じくらい、薩長への憎しみがギッシリ詰め込まれていたのも、気高くあろうとする人間の一面として納得できました。

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