菅野雪虫著「天山の巫女ソニン1 黄金の燕」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
夢見の巫女となるべく誕生後から天山で修行したものの、見込み違いとして里へ帰された12才のソニンは、口がきけない末の王子の心の声を聞いたことから、侍女として仕えることになる。陰謀により王子たちに毒が盛られ、その犯人にされてしまったソニンだったが、苦難の末、天山で得た知識で王子たちを救う。王子を救ったソニンは、天山を下ろされたことを肯定する気持ちを得た。

素敵なファンタジーでした。
ファンタジーといっても、現実世界とほとんど変わりない地に足の着いた内容で、解説の通りファンタジー嫌いでも読める印象です。

やさしく読みやすい文体からして、子供向けを意識しているのかと思いますが、実際、「自分の子供に読ませたい」と思えるお話です。
一番のポイントは、主人公ソニンが、心から応援したくなる真摯な少女であることです。純真で物を知らない面はあるけれど、馬鹿ではないので、言動にイライラすることもありません。幼い彼女がそう振る舞えるのは、巫女として育って、知恵があるから。「落ちこぼれ巫女」という背景が、プラスもマイナスも活きていると思います。
また、ソニンを取り巻く人々は優しく、家族愛や友情に溢れているけれど、善人しか登場しないわけでないことも良かったです。人の悪意に巻き込まれて、周囲から手のひらを返されたり、家族が後ろ指を指されるという現実が描かれていて、そんな現実に打ち勝つためにはやはり、誠実にできることを全力ですることだ、と教えられる良書だと思いました。

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