- 分類読書感想
碧野圭著「半熟AD」
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
元ADで無職の田野倉敦は、同じ境遇の先輩が始めたホームビデオ作成事業を手伝う中、引き蘢りの少女沙良から、オーディション用のビデオ作成を依頼される。天才的な歌声に惹かれた敦は、顔を出したがらない彼女の代わりに女装で出演するも、イベントで口パクがバレ、傷付いた沙良は再び引き蘢ってしまう。しかしネットの批判の中から歌を褒める声を拾い集めた敦は、沙良を説得し、二人は路上ライブを始める。その活動から沙良はスカウトを受け、敦は彼女が再び歌い出すまでのドキュメンタリーを製作する。
一応「お仕事小説」ではあるのだけれど、主人公は実際失業中である、という要素がアクセントになっています。
まず、岡本が始める素人相手の映像制作会社「映像屋本舗」という新規事業の切り口が面白いです。TV業界で働いていたプロが、希望のプライベートビデオを作ってくれる、というのは実際に仕事になりそうですよね。犬の飼い主がなぜ敦より岡本のビデオを選ぶか、という分析も膝を打ちました。
そして、ビデオ作りがメインかと思わせておいて、引き蘢りの少女・山口沙良との交流やネットの炎上などの話になっていくのが、予想外の構成で面白かったです。
前半、テーマが不明瞭で色々な要素は詰め込んであるけれどどう展開するのか、と思っていましたが、最後は温かく締まって良い読了感でした。
中でも、依頼主沙良と恋人川島瑞希というヒロイン2人が、良い女&良い女の子だという要素は大きかったです。