木内昇著「漂砂のうたう」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
御家人の次男坊だった定九郎は、過去を捨て、根津遊郭の仲見世で働いていた。新時代に取り残され、行き場もなく、虫けらのように扱われながら生きることに飽いた定九郎は、花魁・小野菊を足抜きさせる工作に荷担するも失敗し、今まで通りただ仕事をする日々に戻っていく。

明治の根津遊郭という舞台設定、花魁でなく遊郭で働く男たちにスポットを当てる切り口は、なかなか斬新で勉強になりました。地の文を含めた言葉もきちんと時代物になっていて、郭ものとしては一級品の文学作品だと思います。

しかし、読んでいて非常に辛い作品でした。
時代に翻弄される人間の弱さを描いているため、爽快になる箇所が一切ないのです。
特に、主人公が難点でした。弱く情けないのは、そういう人物像だから仕方ないのですが、頭は鈍いくせに、最初から最後までずっと逆ギレしている感があります。当然、そんな人物に魅力は感じないし、人として共感もできず、読んでいる間中イライラしました。

物語としても、展開が遅く地味です。足抜きの片棒を担ぐと決まってからも、なかなか話が進展しないので、正直退屈しました。
そんなわけで、文章としては大変上手な小説なのに、読むのに苦戦させられました。

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