町田康著「スピンク日記」

スタンダードプードル犬の「スピンク」が、小説家の主人・ポチや美徴さん、兄弟犬と過ごす日々を語る、犬エッセイ。

本人視点では「主人と対等な付き合いをしている犬」であるスピンクの語り口が、なんとも面白いです。
異様に人間社会に通じている部分もあれば、犬ならではの価値観や視点を組み込んでくる部分もあって、全体的におかしみを感じます。各エピソードは、可笑しいのか悲しいのか辛いのか楽しいのか、境界が曖昧なところがあり、それも、少し話のとっ散らかったスピンクの話の味だと思います。
一編は短く、連続した話は何回かに分けて語っています。しかもそれが、自宅に蜂が出たとか、暖房機器を買った、という本当に些細な内容のことが多い割に、引き延ばしているという印象もなく付き合えました。

作中にはカラー写真が多数掲載されており、愛嬌のあるスピンクとキューティの姿を、文字だけでなく確認できます。
ただ、それほどページ数のない文庫にしては高額な理由は、ここにありそうです。

しかし、町田康氏が飼い犬になりきって、自分のことを「前世は犬」だとか書いているのだと思うと、読んでいて思わずニヤニヤ笑いが浮かびました。

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