白河三兎著「神様は勝たせない」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
全国出場を目標とする校内唯一のスパルタ教師が率いる中学サッカー部は、予選準決勝で2対0のピンチに追い詰められる。数日前に暴露された秘密によりチームが壊れ、負けても良い気持ちになっていたのだ。辛い試合の中、1人気を吐くキャッチャー、試合を諦めたディフェンダー、拗ねた点取り屋、混乱中の司令塔等は、次第にサッカーをやりたい自分に気付いていく。

6人の語り手が、予選準決勝のピッチからする回想を中心に進むお話。
サッカー自体の面白さ、サッカーを通しての少年少女の葛藤、成長、恋、そして家族というものを感じさせる作品です。

語り手が変わるごとに、部活を揺るがした「秘密」と、進行中の「試合状況」が少しずつ明らかになるため、“数日前にチームを揺るがすなにがあったのか?”という過去のミステリーへの興味と、“試合の勝敗はどうなるのか?”という現在の戦いへの興味がどんどん掻き立てられました。結局、結末まで見届けた後、最初から読み直しもしました。
また、同じ時間軸の出来事を複数の視点で見直すため、「僕はこう考えて行動した」という本人にとっての事実が、他人から見るとまた違う印象になるところが面白かったです。

ただ、肝心の秘密に関しては、少々収まりの悪いものを感じました。広瀬と宇田川に悪意がないのは分かるし、中学生にそこまで配慮を求められないとも思うけれど、謝罪をしないまま終わるのは感じが悪かったです。
結末は爽やかにまとめているけれど、前半の青春スポ根要素強めで最後まで通した方が、私は感動できたでしょう。

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