宮下奈都著「よろこびの歌」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
志望の音大付属高校に落ちて新設校に進んだ御木元玲は、著名な音楽家である母へのコンプレックスや挫折感を抱えていたが、二年生の秋、校内合唱コンクールの指揮者に選ばれ、再び音楽に向き合った。熱の入った指導にクラスの生徒はついて来れず、伴奏の失敗もあってコンクールは散々な結果に終わる。だが後日、マラソン大会で最終走者になった玲を応援しようと、クラスから自然発生した合唱を聞き、「歌わせよう」としていた自分の失敗と、音楽の喜びに気付く。

あらすじを記載した表題作を含めて、複数人の視点で綴る、7話の連作短編構成。
女子高生たちのお話ですが、割と静かに淡々と進みます。

あらすじを極限まで圧縮すると、「好きだった音楽を封印して孤立していた少女とバラバラのクラスメイトが、校内合唱コンクールでの指揮を切っ掛けにまとまる」という話になったはずですが、コンクールは切っ掛けでしかなく、それからの日々の方が長く重要な構造。
でも最後は、迷いや諦めを抱えていた少女たちが、再びの合唱でそれぞれの思いに区切りをつけていく、爽やかな成長物語になっています。

なお、4話目の「サンダーロード」で同級生の牧野史香は幽霊が見えるという設定が明らかになり、急なファンタジー要素に驚きました。彼女が気づく「玲を見守っているお爺さん」の存在が、最終的な玲の物語に大きく影響を与えたとも思えず、この点だけ、ちょっと引いてしまいました。
それ以外は、挫折と再生という普遍的なテーマでありながら、諦めずにがむしゃらに頑張るだけが正解ではないリアリティと、それでも一生懸命に頑張った時に放たれる青春の輝きが美しいお話でした。

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