朱野帰子著「海に降る」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
父親が開発に関わった潜水艦に乗るためパイロットを目指す深雪は、異母弟の存在を知ったことが切っ掛けで閉所恐怖症を発症。耐圧殻に乗り込めなくなった深雪は広報課へ異動し、謎の深海生物“白い糸”を探す高峰と知り合う。父親の影響で海へ導かれた二人は、互いに影響を与え、夢を追う勇気を取り戻す。パイロット候補生に戻った深雪は、高峰と共に深海へ向かい、遂に“白い糸”と対面する。

お仕事小説であり、冒険小説であり、家族小説でもある作品。
面白かったです。

まず、海洋研究開発機構と潜水調査船への綿密な取材に感心します。そして、ドキュメンタリーかと勘違いするほどのリアリティがありつつも、深海というフロンティアをテーマにした創作を作り上げたという点にも引き込まれました。
一度きりの潜行で「竜」を見つけてしまうところは少し出来過ぎだけれど、物語ならではの夢ある良いフィクションだったと思います。

登場人物は総じてアクが強く、特に前半の主人公の鬱屈ぶりや酒乱具合には辟易する面もありましたが、未開の地に挑むにはこのくらいのバイタリティが必要なのかもしれません。

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