- 分類読書感想
阿川大樹著「あなたの声に応えたい」(単行本「インバウンド」改題)
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
東京の商社をリストラされ、故郷沖縄に戻った理美は、コールセンターで働き始めた。クレームや構ってちゃんの自殺示唆、同期の退職に凹みつつも勤務を続けた半年後、会社の代表として「電話応対コンクール」に出場することを命ぜられる。SVからの指導とプレッシャー、同僚の嫉妬に悩みながらも、誰かからのコールに応えることと向き合っていく。
大型コールセンターを舞台にしたお仕事小説。舞台である沖縄の雰囲気も伝わって来て、土地設定が生きています。
読みやすい平易な文章ですが、会社設定や研修内容、実務の描写にリアリティがあり、面白かったです。特に惹きつけられたのが、研修で教えられるいくつかの「スキル」として、真心に関する下記のくだりです。
大切なことは、真心を込めて対応してもらったとお客様が感じることであって、本当の真心は必要ありません。
(「あなたの声に応えたい」第1章抜粋)
私はコールセンターで働いたことはないけれど、電話応対業務はしていたことがあります。その当時に本書を読んでいたら、業務への接しかたが違ったかも、と思いました。
電話応対コンクールは、スクリプトを用意して挑む、ということを知って非常に驚きました。実務能力とぜんぜん関係ない……。まあ、コンクールってそんなものかも知れませんが。
最終的に、理美はコンクールの県大会で終わるのですが、ミス以外は完璧に仕上げることで努力を肯定しつつ、優勝者は尊敬する元上司とすることで、不満の出ない終わりにしてあるのが良かったです。