宝塚月組・浪漫活劇「All for One 〜ダルタニアンと太陽王〜」11:00回。
アクションあり、ラブあり、笑いありのハッピーコメディ。最初は「フフッ」という程度の笑いでしたが、舞台が乗って来てからは、何度か大笑いさせられました。
世紀の傑作というつもりは毛頭ないけれど、万人に「初めて宝塚を観るならこの作品が良いですよ」とお薦めできるエンターテイメントでした。
評価点は第一に、テンポが良くわかりやすい物語であること。
第二に、キャラクターが立っていること。主人公とヒロイン、色男・リーダー・大酒飲みの三銃士、黒服のライバル、悪い大臣(枢機卿)とバカな甥、コメディエンヌな伯爵夫人、変人王女といった塩梅に、顔や名前を覚えられなくても立場と言動で人物の見分けが付く点は、実に初心者向きです。
それから、随所に「少女マンガ」感があり、絢爛豪華な衣装が観られて、タイプの違う男役の格好よさが楽しめる、と宝塚に期待される内容が網羅されています。
でも一番嬉しいのは、見終わって「面白かった!」と清々しい気持ちになれる、ハッピーエンドなところですね。
三銃士やルイ14世の双子説が元ネタでも、このお話では誰も不幸にはならないのだなと感心しました。敵役のマザランですら、失脚はしたけれど家族も財産も無事だし、これまでの功績には感謝の言葉まで頂いているのです。今回は、欲張りすぎの報いを受けただけと言えるでしょう。
詰めの甘い小池先生のオリジナル作品ゆえ、ツッコミどころは多々あるのですが、この大団円の中では些末に感じます。
カラっとしたエンターテイメントに徹しているだけに、観劇後にあれこれ考察したり、盛り上がる要素はないけれど、こういう軽い作品も良いものです。
ただ不満がないわけではなく、楽曲の印象が弱かったのが何より残念。
それと細かいことですが、銃士隊の合言葉が「All for One, One for All」になっている点は引っ掛かりました。原書なら「Tous pour un, un pour tous」だし、舞台上で話している日本語=フランス語であるなら「一人はみんなのために、みんなは一人のために」で良いと思います。作品名「All for One」に合わせていることは分かるけれど、作中で「登場人物がどの国の言葉を話しているか」が描写されているために、ここだけ英語なのは気になりました。
フィナーレは、小池先生の基本パターン。
ロケットのセンターが、180度開脚して持ち上げられた状態で始まっているのは驚きました。非常に綺麗だし笑顔も良かったので、もっと目立つ演出にしてあげても良かったのでは。
沙央くらまは役に合わせて娘役群舞の方に出演でしたが、本作で一人だけリフトもしてもらえるし、相手役ポジションで踊れてお得だった気もします。関係ありませんが、フィナーレでアラミス神父と隣同士なのは「良かったね」と思いました(笑)。
続く男役群舞が、なかなか独特の振り付けで格好良かったです。
もう一度観劇できる予定なので、個別のキャスト感想はその時にまとめます。
でもとりあえず、今まで可愛い系男子と思っていた千海華蘭(ロベール役)が、本編中ニコリともしない護衛隊員で、凄まじく格好良かったことは忘れないうちに記載しておきます。しかしオペラ泥棒され過ぎて、同じタイミングで登場する輝月ゆうま(クロード役)を全然見られませんでした……。