川又一英著「ヒゲのウヰスキー誕生す」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
模造ウイスキーが飲まれている日本で、本当のウイスキーを造りたい。渡英してウイスキー造りを学んだ竹鶴政孝は、帰国後その夢を実現しようとする。戦後不況による資金繰りの難、経営方針との対立、模造品の味に慣れた市場の無理解、他社との価格競争と次々苦難に見舞われるも、政孝は妻リタの支えの下、自分が理想とする本物を造ることに拘り続け、遂にブレンドウイスキーの夢を実現に漕ぎ着ける。

「ニッカウヰスキー」の竹鶴夫妻を取り上げた朝の連続テレビ小説「マッサン」は未見。評判は上々だったように記憶していたので、興味を持っていました。
ただ私はウイスキーが苦手なので、酒造りの要所などは退屈に感じるかもと思っていましたが、全体的に読みやすい文章なので、引っ掛かることはありませんでした。また、大変取材を尽くして書かれているなと感心させられました。
プロローグとエピローグの作者視点の話は、私には少し蛇足に感じます。小説というより、伝記物として書かれているのかもしれません。

作中、竹鶴氏は頑なに「スコットランドのウイスキー」と同レベルのものを日本で造るという信念を通すわけですが、残念ながらそれは技術屋の頑迷さに感じました。実際のところ、山本為三郎社長から彌谷醇平氏を付けて貰えなかったら、どんなにいい在庫を抱えていても、赤字会社のまま終わったのでは、と思います。
「いいもの」を作れば売れるといっても、市場が「いいもの」と思わなければ絵空事ですよね。
また、ウイスキーという酒は、ビールや日本酒、焼酎に比べると一部の愛好家が飲むものという印象があり、国民酒という表現に違和感を覚えました。竹鶴氏晩年の頃はそれだけ全国で愛飲されていたというのなら、その理由も触れて欲しかったです。

リタは、日本人女性以上に尽くす妻として描かれていましたが、幾つかのエピソードから、芯はかなり頑固者だと分かります。
夫婦共、頑固なスコットランド気質故に相性が良かったのかもしれません。

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