仁木英之著「僕僕先生」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
引退した父の財産で安穏と暮らす穀潰しの王弁は、ひょんなことから僕僕と名乗る美少女仙人の弟子となった。玄宗皇帝の宮廷を覗いたり帝江を訪ねるなど、気儘な旅に付き合う内、人から病や植えを取り除きたいという僕僕に惹かれる王弁。しかし天変地異や妖怪変化に知恵で対抗するようになった人間と仙界は断絶し、仙人に蓬莱山へ引き上げるよう命令が下る。僕僕から薬丹作りを学んだ王弁は一人救済を続け、五年後、人間界に戻った僕僕の雲に乗り、二人は再び旅に出る。

第18回ファンタジーノベル大賞受賞作。
読書中、どことなく第1回受賞作の「後宮小説」と似通った空気を感じました。中国物だから、という単純な理由だけではないと思うのですが、少々言語化が難しいです。

面白かったです。
道教や唐代の中国に詳しくなくても、作中で飲み込めるようになっています。
全体的に、ゆるゆるふわふわと、雲に乗っているようなスムーズさで話が進んでいきます。それは大きな盛り上がりがないという意味でもありますが、それも「仙人」らしさと思わされます。
渾沌に飲み込まれる下りの部分だけ、前後のつながりが見えなくて意義があったのかわからなかったけれど、エピソードの羅列のようでいてゆるゆると関係が深まっていく構造は良かったと思います。

王弁は、なにも学ばず、無為に日々を消費するだけのいわば「ニート」だし、若くもない(最終的には三十路)という、かなりのダメ人間なのですが、悪人ではなく、ただ欲望に忠実な小心者なだけ。「親の財産で働かずに生きられると分かっているのに何故働かねばならないのか」という気持ちも、ちょっと分かる気がします。
そんな憎めない王弁と、常に王弁の上をいく僕僕先生のやりとりが可笑しく微笑ましく楽しかったです。

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