平岡緑訳「最後のロシア大公女マーリヤ 革命下のロマノフ王家」

ロシア革命を生き延びた大公女マリア・パヴロヴナ・ロマノワ(Maria Pavlovna、本書ではマーリヤと表記)の筆による、自身の半生記。
マーリヤは、現在宝塚宙組で上演中のミュージカル「神々の土地」の主人公ドミトリー・パヴロヴィチの実姉です。舞台には登場しませんが、同作は本著に強い影響を受けていると思いました。
最初にそう感じたのが、序文のこの下り。

父祖代々、ロマノフ家の者達は、その偉業においても、またその失政においても、ロシアの栄光と国益を自分達の個人的事情に常に優先させてきた。ロシアは、彼らにとって霊魂と肉体の一部だった。ロマノフ家の者達にとって、今まで祖国のために強いられた犠牲が大き過ぎたと言うことは決してなく、彼らは生命に賭けても、ロシアの大地が自らの霊魂であり肉体である証を立ててきた。

また、「神々の土地」のヒロインのイリナは、エラ伯母(エリザヴェータ)の年齢設定を変えたものと思っていたけれど、実際はさらにマーリヤの要素を加えたキャラクターだったように思います。

舞台との関係性は置いても、とても面白かったです。
470ページ、フォントサイズ極小、古めの訳という三重苦でしたが、非常に惹きこまれて貪るように読みました。
大公女の歯に衣着せぬ物言いで、ロシア皇族の暮らしが眼前に蘇るようでした。革命に関しては後から知った事実の付け加えや伝聞が多いですが、渦中にいた当事者にしてみれば、目の前のことしかわからないのが当然だろうと思います。
革命が起きたら、貴族は即逃げて行ったんだろうと思っていたけれど、普通に国内にいたのですね。国を捨てるなんて考えられない事だったのでしょう。
残念ながら最後は尻窄みに感じたけれど、回顧録という形式上、オチは付きにくいので仕方ないですね。

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