安田寛著「バイエルの謎 日本文化になったピアノ教則本」

日本で100年以上愛用されている「バイエル・ピアノ教則本」の作者「フェルディナント・バイエル」は、誕生年月日と誕生地、没年月日と没地は明らかでありながら、その記録がなく、誰も経歴を知らない謎の作家であったーー

ということで、作者が6年かけて「バイエル」のルーツを探す本。
「バイエルの謎」というタイトルに疑問を抱いて手に取り、確かに教則本の「バイエル」は知っていても、作曲家「バイエル」とはどんな人物なのか知らないことに気付かされました。
筆者が、バイエルは何者か、複数人のペンネームでないか等推理して、現地を調査し、資料にあたっていくと言う調査の過程が詳しく描かれています。
探索の過程がほとんどで、いささか脱線傾向と思うところもありました。研究としては、少し雑に感じる部分もあります。しかし地道で芽の出ない調査を続けて諦めていた頃、ささやかな切っ掛けから謎が解ける快感と、明らかになったルーツから「バイエル・ピアノ教則本」が本当に目指していたものが見えた時の感動は、作者の6年に読者が寄り添うことで得られたものだと思います。

ちなみに、バイエルの伝記マンガがあるじゃないか、と思って取り寄せたら「フィクション伝記」だったという下りは笑ってしまいました。
書籍名などは伏せられていましたが、下記の本ですね。確かにAmazonの商品説明にも、「創作した漫画でバイエルの人生を描く。」と書いてあります。

また、この話にはオチがついています。
それは、本書執筆後、Googleブックスで検索すると、1863年6月1日発行の「南ドイツ音楽週報」でバイエルの生涯が分かるようになっていた、ということ。いや本当に便利な世の中になったものです……(苦笑)。

コメント

  • コメントはまだありません。

コメント登録

  • コメントを入力してください。
登録フォーム
名前
メール
URL
コメント
閲覧制限
投稿キー
(スパム対策に 投稿キー を半角で入力してください)