蘇部健一著「運命しか信じない!」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
ある日、稲葉家の飼い猫タマがミルクを零した。本人たちの知らないそんな切っ掛けで、仙波莉子と京川俊は運命の出逢いを果たし、その二人の出逢いが更に4組のカップルを生んでいく……。だがその背後に、タマがミルクを零したために出逢わなかった1組の男女がいた。

「運命の出逢い」を果たす男女の恋物語を描いたオムニバス作品。
でも実際は、その半数以上が「運命」を演出するために努力したお話でもあり、単なるロマンチックな恋愛小説でないところが面白かったです。

実は、ハッピーエンドで頭を悩ませずに読める本が読みたい、と思って手に取ったら、いきなり関連性がわからない多数の人物が登場するので面食らいました。でも最後に、ドミノ倒し的にすべての短編が繋がっていく仕掛けは爽快だったし、その最初のきっかけに「運命的なすれ違い」をし続けた2人のお話があるというオチにもカタルシスがあります。
好きになれないエピソードもあったけれど、一つずつが短編なのでサラリと読めます。

エピソードの1つにトマス・ピンチョンの「V」を読む下りがあり、「ミラーさんとピンチョンさん」という輸入漫画を読みたかったことを思い出しました。
漫画にしてはお値段が高くて様子見していたら、Amazonでも売り切れになってしまったのですね。「V」ほど高額本ではなかったのだから、買っておけば出逢いがあったかしら(笑)。

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