愛する気高き犬は、しかし素っ気ない欠伸を残して立ち去ってしまった。
肩を落とした彼女に、飼い主である青年が慰めの声を掛ける。
「残念だったな、エステル」
但し、彼がそう言う口の端からは噛み殺した笑いが漏れているので、本当は同情していないことくらい、鈍いエステルでも分かる。
そんなに自分の姿は滑稽なのだろうか。
「猫は懐いたのにな」
ユーリの言うことは、彼女が理解できる範囲を超えている事がある。
覚えのない話に、エステルは首を傾げた。
「猫がいたんです?」
「ああ、直ぐに火を吹く茶色い凶暴な奴が一匹」
聞き覚えのある特徴は、明らかに仲間の一人を示していた。確かに、あの少女はどこか猫に似た雰囲気があるかもしれない。
二人の視線を受けた天才魔導少女は、くるりと丸い円を描いて振り返ると一喝した。
「あたしと犬っころを一緒にするな!」
──同じことを唸った声もあったのだが、これは誰にも聞き取られぬまま終わった。
何も考えずに書いたら、またリタオチになりました。
そのため、少しは捻ろうと何パターンか書き直してみましたが、結局シンプルな最初のパターンに戻りました。彼女は反応が子供だから書きやすいですね。