青木祐子著「嘘つき女さくらちゃんの告白」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
美人イラストレーターsacraとして持て囃されるも、盗作疑惑が持ち上がり失踪した権田八重子(通称さくら)。ライターの朝倉未羽は、中学時代のクラスメイトや恩師、恋人などにインタビューを続けて、悪気なく爪の甘い嘘を吐き続け、盗作、経歴詐称、結婚詐欺を繰り返したさくらの真実に迫る。遂に本人に辿り着き、一冊の暴露本をまとめた未羽だったが、作品はさくらの自叙伝として発売されてしまう。

各々のインタビューによって、その人物を通した「さくら」が見えてくる面白さと、なぜ彼女が美術の世界での成功に拘ったのかという謎に惹き付けられて、気持ち悪くも楽しく読みました。ただ、最後のどんでん返しは個人的に残念なオチでした。
作者は、もしかすると読者にさくらを好きになって欲しかったのかも知れない、と思います。息をするように悪意なく自然に嘘をついて、他人のものを盗んでいくけれど、どこか憎めない美少女。でも私は、終始さくらに得体の知れない気持ち悪さを感じていたので、さくらが報いを受けない世界の後味は悪く、落胆しました。
これが、最近流行りの「イヤミス」(後味が厭なミステリー小説)というタイプだったのでしょうか。

さくらの凄まじいところは、虚言癖というだけでなく、悪意がない上、自分がその場で吐く出任せが、彼女の中では「真実」になっているというところだった気がします。話の通じない恐ろしさを感じました。

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