- 分類読書感想
朝倉かすみ著「好かれようとしない」
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
赤面症で「必死」な姿を見せることに抵抗を覚える二宮風吹は、番号のわからないトランクを開けるため呼んだ鍵屋に一目惚れ。偶然を装って店先で遭遇したり、家鍵を紛失したことにして仕事を頼むなど、必死に見えないようにアプローチを始める。そんな風吹の必死さと真面目さが、人妻との関係を続けていた鍵屋の誠意を引き出し、二人は客と鍵屋の関係から一歩進むことになった。
初めて読む作家。
タイトルから、毅然と生きる話なのかと思いきや、どちらかというと不器用な捻くれ女子が、表面上は冷静にしつつ、必死に「好かれよう」「視界に入ろう」と頑張る話でした。
ただ、主人公・風吹の性格が応援したくなるタイプではなく、相手の鍵屋も碌な男に思えず、基本的にイライラさせられました。
風吹が、電話口で母親に「へんなところでまじめ」と言われて、どこがへんなところか聞き返す箇所が身に沁みます。
「そういうふうに突っかかってくるところじゃないの」
受け流せばいいところを、ゆるがせにできないって感じで責め立ててくるじゃないの、と母は答えた。
「責め立てる?」
責めているつもりは、風吹にはなかった。(中略)
「あんたにその気がなくても、いわれたほうは責められたような気になるのよ」
私もそういう部分は風吹と似ているので、余計にグズグズしているところや妄想的なところが癪に障ったのかもしれません。
序盤のゆっくりさに比べて終盤の展開が早く、鍵屋がなぜ風吹に気持ちが傾いたのか納得できなかったけれど、恋に理屈はないので仕方ないでしょうか。二人のデートは初々しくて、ちょっとニヤニヤさせられました。
大家さんと、家庭教師先の落合美丘のキャラクターは面白かったです。
文章表現はなかなか素敵だと思わされたので、他に面白そうな作品があれば、また読んでみたいと思います。