田中芳樹著「七都市物語〔新版〕」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
大転倒により地上の人類は全滅し、月面都市住民は同格の七都市を新設した。その数十年後、月面都市は地上500メートル以上の飛行物体を無差別攻撃するオリンポスシステムを残して疫病で滅んでしまう。空を失った地球人たちは、地上の覇権を巡って都市間の争いを始める。やがて名将たちの采配により、拮抗する七都市から一市が脱落した。

地球上の全人口が7つの都市に分かれて覇権を競う、正に群雄割拠の時代。SF版春秋戦国時代という印象でした。

短編連載形式で戦いに次ぐ戦いが描写されています。
主人公かと思った人があっさり脇に回るし、敵味方も固定ではありません。特定のキャラクターに感情移入する読み方だと、少し難しいかも知れませんが、私は非常に楽しめました。それに、「銀河英雄伝説」と比べると、勢力数は倍なのに登場人物はぐっと抑えられているので、意外と把握しやすいです。
特に面白かったのは、登場人物の性格が総じて悪いこと(笑)。
ヤン・ウェンリー的なポジションのリュウ・ウェイですら、如才なく自己保身を図っているし、権力が絡めば友情も薄っぺらい。ニコラス・ブルームの「全員を満足させようとして全員に不満をいだかせる」という評などは、設定だけでなく実際の振る舞いに表れて展開に組み込まれているのは感心しました。いるよね、こういう人!
どの都市のキャラクターも、主人公として見るには戸惑われるアクの強さがあり、それゆえ最後まで誰が勝つかわからないところも、唸らされました。

基本的には各戦争へ至る前提と、実際の戦闘の描写の連続で進みます。
「銀河英雄伝説」に対しては、宇宙で戦っているのに戦法が平面的だ、という批判を目にしたことがあります。
その点、本作は最初からオリンポスシステムという「航空機を使えない」設定を設けているのが上手いと思います。そして、そのオリンポスシステムを利用した戦術を披露されたところなどは興奮しました。

残念なのは、一巻完結作品なのにビシッと終わっていないこと。
モーブリッジJr.を発端とする一連の戦争は終わっているものの、リュウとギュンター・ノルトが隠居したまま終わっているし、せめて一区切りついているならともかく、尻切れとんぼ感が否めません。最後に外伝短編が収録されているのも、却って消化不良でした。
今更再版して、漫画連載まで始めたということは、田中先生に続きを書くつもりがあると見なしていいのかしら?(ヤングマガジン公式サイトで1話試し読み可能)
アルスラーン戦記も終わったし、ちょっと期待してしまいます。

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