神坂一著「スレイヤーズ16 アテッサの邂逅」
発売日前後は忙しかったので、後日買おうと思っていたら、発売初日から全国的に売り切れて、書店でもネット通販でもなかなか手に入らない状態が続いていました。先日、ようやく紀伊国屋書店新宿本店にて確保できましたが、1人1冊制限がされていたのには驚きました。
18年ぶりではありますが、これぞ「スレイヤーズ」原作、と感じる懐かしさを味わいながら一気読みしました。
以下、ネタバレ注意です。
正直読む前は、作者も「設定を忘れた」と明言するレベルで間が空いた新刊に対して不安がありました。更に、この16巻が「第3部」の始まりであるなら、第3部として公認されているSFC版ゲーム「スレイヤーズ」はどうなるのか、という悔しい気持ちもありました。
しかし今回の16巻は、あとがきで作者が「特別編のつもり」と語っている通り、新しい長編シリーズの1巻目というわけでなく、ファン向けの1エピソードという形式だったので安心しましたし、読み始めてしまえば15巻からの続きとしてすんなり読めました。
ゼル、アメリアといった第一部の懐かしいメンバーが再登場するのは同窓会っぽいですし、仲間側に登場した新キャラクター・アライナは超人見知りという「すぺしゃる」キャラっぽい個性の持ち主だったりするので、全体的には「劇場版」っぽい小説でした。
名のある高位魔族を登場させるのは難しかったので、敵がこれまで掘り下げられていなかったエルフ族とザナッファーなのは上手いところだと思いました。まあ、再アニメ化した際の「REVOLUTION」でもザナッファーを登場させていたことを考えると、ザナッファー自体が便利なアイテム化してる気もしますが、事実、世界観を崩す危険なく強敵として追加投入できるザナッファーは便利なアイテムなんだから仕方ないですね。
今回読んでいて面白かったのは、アメリアとゼルの印象が、原作とアニメで違うことを改めて思い出させられたことです。
アニメは、器用貧乏なゼルの方が経験値の差で優秀、と言う印象なんですが、原作だとアメリアのメンタルの強さと才能が光っていた印象があります。
そして今回、王族らしく成長している上、ザナッファーのレーザーブレスに対抗できる新魔法をアメリアが持ってきたことに、とても興奮しました。人類の未来を考えて行動しているアメリアのような子が仲間であることに、すごく希望が抱けますね。
また、リナといったら「最強レベルに強い主人公」と言う印象があるのに、呪符がなければ翔封界ですら一人用になってしまうと言う弱体化した姿を描いたのが、今回の白眉だったと思います。これは原作者が言及するのでなければ、受け入れ難かったところだと思うし、その一方で、指摘されて確かにと頷いたところです。
今回、魔力不足の対策として登場した増幅魔法陣も、アライナなしで作れるとは思えないので、リナも人相応の強さに戻ったわけですね。となれば、SFC版第3部でああいう展開になるのも納得です。
一方で、ブラストソード装備のガウリイは光の剣装備時代より強いんじゃないのか、と言う疑問が湧いてきましたが……。
5〜10年に1冊くらいのペースで、こういうファンアイテム的な新刊が出るのも嬉しいものだな、と思いました。