宝塚花組「祝祭喜歌劇 CASANOVA」15:30回
ドン・ジョバンニのモデル、実在した世紀のプレイボーイ・ジャコモ・カサノヴァを描いたオリジナルミュージカル。
全曲ドーヴ・アチア書き下ろしと聞いて、一度は観ておきたい!と思っていたので、チケットが手に入って嬉しかったです。それにしても、演出の生田先生は、毎回自作品の楽曲を豪華作曲家に依頼していますが、どういうツテがあって実現しているのか、実に疑問です。
内容自体も、面白かったです。
生田先生と明日海りお、それぞれにとって、新たな代表作となる作品だと思いました。
一本物ですが、出来事が詰まっていて飽きさせないし、それでいてストーリーは単純明快という、楽しいミュージカルに纏まっていました。半分寝ていても話について行けるような、昔懐かしい宝塚作品っぽいとも言えるし、キャラクターがわかりやすく記号化されているので、初宝塚観劇者にも向いているのでないかしら。
そして、元々フレンチ・ミュージカルで上演されていた作品だと言われても不思議でないくらい、フレンチミュージカルの香りがする作品でした。ドーヴ・アチアの楽曲はシンセサイザーをバリバリ使うためか、総じてポップなノリですが、本作にはその軽妙さが合っていたと思います。
指揮が塩田先生だったので、安心して聞けたのも良かったです。
ただ、マイクがエコーかけ過ぎだったとは思います。歌ウマも歌下手も、平均化されてしまっていたような……。歌詞を聞き取るのも、たまに苦労しました。
「祝祭喜歌劇」と銘打たれているものの、序盤は割と重々しく始まるので、普通に大作の雰囲気があります。
これは東京特有のノリかも知れませんがーーコンデュルメルの嘘泣き芝居あたりから、客席が「もしかして笑って良いところ?」という雰囲気で落ち着かなくなったのを感じました。結局、一幕はほぼ笑いが生じなかったんですが、二幕は結構あちこちで安心して笑ってる様子がありました。もう少し最初から、砕けたノリで観て良い作品ですよ、という「隙」があったら良かったかもしれません。無意味に大作感を出してしまうと、重厚なストーリーを期待した観客から「内容がない」と思われることにもなりますので。
更に最後は大岡裁き的なオチが付くあたり、同じ生田先生の「Shakespeare」を思い出しました。
まあ終盤にドタバタと詰め込んで畳むのは、生田作品のお約束だと思うべきかもしれません。
モーツァルトが登場したところで、オペラ「ドン・ジョバンニ」作曲秘話っぽくなるのかな、と思ったし、婚約がオペラ上演日という情報から、ジャコモがオペラの出演者になる展開も予想通りでしたが、それによってオペラの「ドン・ジョバ~ンニ♪」のフレーズまで聴けたのはちょっと嬉しかったポイント。
芝居ラストのカーニバルからフィナーレへと直接繋がっていくのも、久し振りに観る演出で良かったです。
以下、キャスト感想。
ジャコモ@明日海りおは、あまり欲望を感じずさらっとしているため、プレイボーイ然としていても嫌みがないのが面白かったです。それでいて1000人の女性と関係した、と言っても信じられてしまう説得力があっての作品ですね。
ベアトリーチェ@仙名彩世は、登場シーンのドレスがちょっとゴテゴテしているし、修道院育ちという設定からも掛け離れていて疑問だったけれど、それ以外は綺麗でした。いつものアニメ声も、エコーかけ過ぎな今公演だと、聞き取りやすくて良かったです。歌も実力で聞かせました。ただ、立ち姿の上半身が前のめりになっていることが多く、美しく見えないことがある点が最後まで残念でした。
コンデュルメル@柚香光は、マイクの恩恵を受けた方の一人。怜悧な美貌なので、黒づくめで立っているだけで迫力がありました。
更にコンデュルメル夫人@鳳月杏は圧巻。愛されたい「女の業」を魅せてくれました。コンデュルメルとお似合いの、迫力ある美人でした。
コンスタンティーノ@瀬戸かずやは、スラッと背が高くて素敵なのに、終始おバカっぽいところのバランスが良く、なんとも可愛い男でした。
バルビ神父@水美舞斗は、主人公と出会って忠実な従者ポジションになっていく美味しい役所。カサノヴァの影響を受けてなのか、最初は「モジャモジャ」とか言われて嫌がられているのに、段々と垢抜けた雰囲気に変わっていった印象があります。
娘役にも結構目立つ役があり、特に仙名と同時に退団する上級生娘役2人には、かなり良い役が付いていました。
ダニエラ@桜咲彩花は、活発なお嬢様に振り回されつつも、ちゃんと職務を果たす主人想いの素晴らしい侍女。可愛くて温かみがある良い娘役だったな、とつくづく思いました。
ゾルチ夫人@花野じゅりあは、副組長職とは思えない、無茶苦茶可愛い乙女っぷり。でもロマンチックな雰囲気を壊されて凄む時に、迫力がありましたね。
ベネラ@音くり寿は、夫人の僕(猫少女)の中でちょっと特別扱いで美味しい役。エトワールも良い高音でした。
セラフィーナ@華優希は、オペラグラスを覗かなくても、可愛い子がいるな、と思わされるオーラがありました。