宝塚宙組 ミュージカル「オーシャンズ11」13:30回。
今日は、数年ぶりの一階席で、しかも前方センターでした。
二階席から全体を見渡すのが好きではあるのですが、肉眼で細部まで見えると、キャストの芝居や演出意図が分かりやすいし、気持ちも引き込まれますね。
平日の日中は客席も豪華で、山崎育三郎、OGの涼紫央(御一家)が観劇しているのに遭遇。演出の小池修一郎先生もロビーでお見掛けしました。
以下はキャスト感想です。
ダニー@真風涼帆は、やはり男役完成度の高さが魅力だなと思いました。
テスから愛想尽かされているのは自業自得だし、実行しているプロジェクトは犯罪だし、ベネディクトを標的にする理屈も私怨が入ってるようにしか見えません。それでも主人公として魅力的に見えるのは「役者が格好いいから」としか言いようがないでしょう。
テス@星風まどかは、技術的には星組、花組のテス役者より上手いのですが、台詞回しは真似ているのか、と思うくらい記憶の花組版に近くて、ちょっと不思議に思いました。娘役が「怒り」の芝居をすると、どうしてもこういう調子になるのかも知れませんね。
そもそも非常に難しい役だと思います。自分勝手な女なので、観客から共感も応援もしてもらえないんですよね。なんせ手厳しいことを言えば、テスは夫の被害者への償いも「もらった指輪」を売った程度で身銭を切っていないようですし、結果的に自分は苦労せず、しかも非難していた手段(犯罪)で手に入れた金が出所とわかっている筈なのに、エバーグリーンの管理権を譲られて満足するチャッカリした女です。特に、イベント直前に、演出を嫌がってプロモーション出演を拒否するところは、プロを目指すなら有り得ない甘えです。
結局この役は「二人の悪い男から愛される美女」という記号であって、逆に星風まどかの技術は不要だったのでないかーーと思いました。
ラスティ@芹香斗亜は、はまり役だと思います。
華があって、調子の良い男で、でも頼りになる部分もある、さらっと都会的なラスティでした。
ベネディクト@桜木みなとは、初見感想でも書いた通り、濃いキャラクターをしっかり演じていました。もっと手堅くまとめてしまうかと危惧していたので、嬉しい裏切りでした。この作品が「爽快なエンターテイメント」という印象で終わるのは、やられたベネディクトが「ネバーギブアップ」宣言で終わるからだと私は思っています。そのバイタリティを感じるベネディクトで良かったです。
それに、あの怒鳴り気味の歌い方で終始通しても喉を潰さず、音程も外さない歌唱力にも驚きました。
ただ、火曜夜に続き同じ箇所で噛んで言い直したのが気に掛かります。よほど言いにくい台詞なのか、あるいは疲れが出ているのでしょうか。
フランク@澄輝さやとは、性格が良さそうなフランク。
賭博協会追放理由が「仲間を勝たせすぎた」という人の良さ、ラスティと話す隙を作るためにワザと勝つクレバーさ、潜入後、掃除のおばちゃんとも短期間で仲良くなる人当たりの良さなど、数々の台詞から逆算して人物像を作ったのかな、と思う説得力のある演技でした。
バシャー@蒼羽りくは、手品関係で苦労しているなと思いました。残念ですが、登場シーンで帽子の柄を変えるマジックは、舞台のサイズに合ってない地味なネタだと思います。せっかくやっているのに、あれではよく見ていないと気付けなくて、マジシャンという設定を印象付けられていません。
マジシャン設定が弱い分、仲間との触れ合いにバシャーの人物像が出ていたと思います。ラスティとは、ダニーとラスティとはまた違う元同級生っぽい悪友感があり、地下潜入の歌でラスティを脅かすところなどは実に楽しそうでした。
花組版のバシャーはモテる男だと思ったけれど、宙組版はまだ男同士で連んでるのが楽しいタイプですね。それでいて、テスが破り捨てた離婚届を拾う時の屈み方が凄く格好つけていて、思わず二度見しました。
フィナーレは、久し振りにウィンク連発を見られて楽しかったです。
ダイアナ@純矢ちとせは、今日も拍手喝采でした。
性格の悪い女だけれど、彼女の立場からしたらテスが不快なのは当然ですし、陰険というほどでなく爽快感すらあるので、応援したくなります。そもそもダニーたちの成功には、ダイアナの存在が大きく関与しているので、12人目の仲間と言っても過言ではないでしょう。
ただ、あまりにパワフルすぎて、ベネディクトの愛人には見えないのが難点かな。星組の時は、テスと同世代の女だったから、権力者の寵を競う対等なライバルに見えたのですが、今回はお局様の新人いびりでした。
ライナス@和希そらは、小柄なこともあって本当に少年感が強いです。これまで私は、和希そらの舞台姿から「目立つぞ!」という意気込みを受け取り、たまに暑苦しく感じていたのですが、今回はいい具合に力が抜けたのでないかと思います。
台詞も歌でも明瞭で芝居も文句なし。特に、賭博協会委員に変装してフランクを摘発するシーンで、「脚本を読んでいます」という感じが伝わってくるのが、素晴らしい演技力だと思いました。
リヴィングストン@瑠風輝は、二階席で見たときは意識しなかったのですが、非常に長身でスタイルが良いですね。リヴィングストンは萌えキャラ枠だと認識していたので、「あれ、君ってもしかして格好良くねー?」と驚きました(作中のラップのノリでお読みください)。
登場シーンといえば、今日のモロイ兄弟@優希しおん、鷹翔千空は、歌の出だしで妙な躓きを感じました、一小節くらい飛んだのか?と思う妙なテンポになって、その後も歌う時に何か引っ掛かっているような違和感が有りました。指揮は塩田明弘先生だったので、オーケストラのミスとも思えないし、気のせいでしょうか。
二人の踊りは、「チップとデール」を彷彿とさせられて、毎回お気に入りです。
イエン@秋音光は、花組の華形ひかるが悪事に加担している自覚もなさそうな純真な少年だったのに対し、今回は自立したキレ者感があり、真逆の印象なのが面白かったです。
例えばエルチョクロを「しけた店ネ」と評するところで、花組イエンは悪意なく、英語が不自由だから言葉の選び方が悪かったという印象なのに対し、宙組イエンは語尾に舌打ちがついてもおかしくない生意気さを感じました。
精神的に大人に見える分、バシャーとの関係も、ややドライで、或いは小馬鹿にしてるような気がしました。
ソール@寿つかさは、かなり枯れた印象のソール。色気を出せる役者なのに勿体無いと思ったけれど、変装後の武器商人と差をつけることで、詐欺師らしい変装っぷりを表現していたのかなと思います。
マイク@留依蒔世は、歌は上手いのですが響くために、肝心の歌詞がいささか不明瞭だったと思います。マイクの歌で状況説明する場面も多いので、もう少し歌というより台詞として扱って欲しかったかな。
3ジュエルズ@瀬戸花まり、華妃まいあ、天彩峰里は、歌唱力が抜群なだけでなく、3人が異なる個性を押し出しているのが好印象。今回初めて、ただのバックシンガーではなく、3人でいる意味が見えた気がします。
ブルーザー@若翔りつは、サングラスを外すと目がくりっとしていて、お馬鹿で憎めないブルーザーという男の可愛さが表れていました。
彼は結末においても、ダイアナのブロードウェイ行きを素直に応援してあげていたり、ベネディクトの「ネバーギブアップ」に加わっていたりして、気持ち良い奴だと思います。
アドリブは下記の通りでした。
ちなみに、Edenプロモーションの話を聞いて憤慨したダイアナを追うハロルドの台詞もアドリブだったんですね。今日は「高級なリンゴ買ってあげるわ」でした。9日は「たくさん」だったと記憶しています。
- ベネディクトのオフィスは「みんなでオーシャンズ11 Blu-ray宣伝活動をしていた」
- ソールの演技指導は「ルームサービスをお持ちしました。美味しくなあれ、萌え萌えキュン♪」
- ジョンソン先生も「萌え萌えキュン」
ソールは「老若男女、どんな人物でも演じられるように練習しろ」と、今日の台詞を正当化していたのがおかしかったです。
一方、演技指導からネタを引き継いだジョンソン先生は執念深かったです。いつまでも「萌え萌えキュン」を続けるので、ベネディクトがどう絡むべきか悩んでいたし、最終的にベネディクトにも「萌え萌えキュン」を強要。そして「キュン」だけで良い、とか言っておきながら、ベネディクトが嫌そうに「萌え萌え…」とやり始めところで撤収する鬼畜の所業でした。さすがのベネディクトも、そこで切られると思っていなかったのか、横を向いて笑ってしまっていましたよ。