PS4版ノベルゲーム「コーヒートーク」一周しました。以下、ネタバレを含みます。

コーヒートーク

世界観、システムなど含めた体験版感想は、2020年1月30日記事参照。

2時間程度で終わるADVなので、サクッと2回に分けたプレイでクリアしました。
トロフィーで確認するに、常連客全員が良い結末に辿り着いたようです。

コーヒートーク

プレイ中の早い段階で「2周はしないだろうからグッドエンドを目指そう」と思ってプレイしていました。ゲーム性は低いので、この結末を迎えること自体は難しくなかったです。
クリア後、スタッフロールを眺めながら、感想をどうまとめようかと考えていたのですが、スタッフロール後にあったやりとり(ポストクレジットシーン)で衝撃の事実が発覚し、急遽2周したくなりました。そしてこれのせいで、ネタバレ抜きの感想が不可能になってしまったのでした。

コーヒートーク

正直、他の出来事を全部忘れそうなくらいのドンデン返しでした。プレイ中の主人公の台詞や態度を、次の周では穿って見てしまいそうです。

ストーリー全体は、人間関係、親子喧嘩、仕事トラブルなど、身近な事柄がほとんど。終盤の2日は事件も起こるけれど、基本的には起伏がなく淡々としたシーンが多いので、日常物に興味のないプレイヤーだと退屈かもしれません。
店の外で起きている事件の方が、気になることもありました。

コーヒートーク

しかし本作が多民族国家インドネシアのインディーゲームであることを踏まえると、強いメッセージ性を上手くファンタジーに落とし込んで表現した、上質の「雰囲気ゲーム」だと思いました。

主人公も会話には参加するけれど、基本的には客同士のやりとりを傍観者として垣間見ていきます。最初は見ず知らずの客同士が少しずつ会話を交わすようになり、予想外の関係性ができていくのが面白く、見守る気持ちで進めました。
私が特に好きなのは、アクアとマートルのゲーム開発組。SNSの画像が作中で変化することに気付いたのは、アクアのおかげです。こんな強い女の子に成長するなんて、嬉しいなあ。

コーヒートーク

個別の初来店時は、この2人が結びつくとは夢にも思わなかったけれど、最終的には他の客もみんな察していましたね。そもそも中盤では「ただの友だち」と言っていたくせに、最終日の2人は全然隠してませんでしたが。

公式サイトでトップ画像になっているエルフとサキュバスの二人(ベイリースとルア)は、意外と来店回数が少なかったので、目立ちませんでした。彼らにとっての大きな出来事は店外で起きているという点も、印象に残らなかった理由かもしれません。二人の価値観のズレは、非常にリアリティがあって難しい問題だったんですが、愛を信じる展開になってホッとしました。
ガラとハイドは逆に、半世紀の仲だけあって、初登場時からエンディングまで2人の間には特に変化がなかったですね。彼らの来店は、どちらか一方だけでも毎回楽しいものでした。

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ハイドがルアに辛辣なことを言ったのは、最初はそういう性格だからと思ったのですが、その後、人狼の家族愛を知り、もしかしたら自分の立場を置き換えて自虐していたのかもと感じました。
ちなみにこの二人、来店時に「デキてる?」と思いました。その後、会話を繰り返すうちに「普通の友達かも」と思い直し、最終日で「友達だ」と結論付けた後に、トロフィーでその判断をひっくり返され「やっぱりカップルなの!?」と声に出ました。

最もインパクトを残したのは、宇宙人のニール。

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最初は交配したいという目的にドン引きしましたが、要するに「スーパーマンを作る」という話だと分かったところで、面白いなと感心しました。味覚のないニールに訴えかける1杯を試行錯誤して「ミルキーウェイ」に辿り着いた瞬間の「これだ!」という感覚も込みで、8日目は良かったです。

コーヒートーク

最終的にはあの言動も可愛く感じていたので、問題のポストクレジットシーンで擬態が洗練されてしまったのは、ちょっと寂しかったです。

レイチェルとヘンドリーは終盤の騒動の肝ですが、それまでのヘンドリーの言動が不快で、娘への愛という束縛を表現しているのかと思っていたので、全面的にレイチェルが非を認めたのは意外でした。
前日の対応を間違えて、もし12日目にガラがいなかったら、どうなっていたのか……。バッドエンドは好きでないのですが、気になります。
初登場時の「やったね、実績アンロック〜!」は可愛かったし、システムメッセージ込みでニヤリとさせられました。

コーヒートーク

ネコミミ族は猫姿も見せてくれるので、それが可愛くて良かったです。

ADV部分は読むだけで進行するため、ゲーム性があるのは、客に提供する一杯を作る箇所だけ。それも、基本は注文通りの品を出すだけで良いので、かなり簡単でした。
ただ、終盤の〆切に追われるフレイヤに出す一杯は、注文と主人公の意見が食い違ったので悩みました。直前のベイリースとの会話を信じて、主人公の意見を通したけれど、それに関しても正解の一杯が明示されていないので、不安になりながらの提供となりました。
それと、満月の日にガラが発作を起こして人狼姿で来店した時、スマホで特効薬のレシピを調べようとしても表示妨害されてしまうので、この時は配合を間違っていないかという緊張感がありました。

コーヒートーク

ミスった場合に、廃棄する余裕があったのかどうかは試し忘れました。

レシピ埋めは、作った後に提供しないと記録されない仕様のせいで、本編で作りきれず、フリーモードで延々試行錯誤しました。

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想像力で作る時も悩むけれど、レシピにいないブレンドをノーヒントで注文されるのが辛かったです。
知っているブレンドや、ローディング画面で見掛けたブレンドなら、1、2回の試行錯誤でなんとかなります。しかし見たことも聞いたこともない「テータリック」を注文された時は、本気で困りました。ベースが紅茶(TEA)という点までしか想像できず、結局「テータリック」自体の意味を調べてしまいました。
また、必要な素材は合っていても、メインとサブの素材が反対になっていると別物判定されてしまうのも悩まされました。

コーヒートーク

ラテアートは、体験版(Switch版)より少し動かしやすいと思ったけれど、コントローラーの差かもしれません。エッチングできるようになったので、謎めいた渦巻などを量産してしまいました。

グラフィックは高水準。
特に、ドットアニメーションによる仕草の細やかさに感心しました。人と喋っている間でも、机においたスマホに着信があると、チラッと見るだとか、非常にそれらしい動作をするので、その空間にいるリアリティが感じられました。

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なお、ギャラリーには前日譚的なWebコミックも収録されています。ドットではない常連たちの姿が新鮮でした。

日本語翻訳はほぼ文句なしでした。会話を楽しむゲームとして重要な点なので、ここで一切のストレスを感じさせなかったのは嬉しい点でした。

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ただ、本作の世界や種族に関して、登場人物は既知であるが故に詳しい説明がなく、会話から読み取る必要があるのが良し悪し。十分読み解けるのですが、用語辞典があればもっと取っ付きやすかったと思います。
例えば、作中で「クーチェラ」と言われている音楽フェスは、おそらく「Coachella Valley Music and Arts Festival」のことだと思います(訳が「クーチェラ」なのは原文でそうしているのか、訳者が誤訳したのか、ネイティブだとそう読むのかは謎)。こういう日本人には馴染みがないイベントも、説明があればより話がわかりやすかったと思います。

我々の日常と地続きの悩みを描いた短編集的作品として、コーヒーを飲みながら楽しめる数時間でした。

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