ダンス作品「空白に落ちた男」19:30回観劇。
初演の評判が良かったので、気になっていた舞台。再演を知り何とか時間をやりくりして行ってきました。

初めてのパルコ劇場。
チケットを取った段階で、私が今まで行った劇場で最小サイズの箱だなと思っていましたが、実際に行ってみると座席表で受けた印象より、広かったように感じました。
すごいキツイ傾斜だったので、後ろの方で観劇すると少し怖そう。
でもこのくらい段差があると、前席の人の頭に視界が影響されないので、とても嬉しいですね。

結論から言うと、実に面白かったです。
解釈が出来ないので、作品自体の善し悪しは私には語れませんが、パフォーマンスとしては、とにかく凄いものを観せられました。
パンフレットにはダンス作品と書かれていたし、ダンス中心なのかなと思いながら観に行ったけれど、やっぱり芝居であり、でも芝居じゃない。
一体、何が正解なのか?
そもそもどういう話なのか?
全然分かっていません。

殺人事件を追う刑事の物語を軸に、関係があるのかないのか謎のエピソードがオムニバス的に挿入される構成であると読み取りました。
セットは固定で、机と椅子の位置が変わる程度なのですが、演技が始まると直ぐにどんなシーンなのか伝わってくる表現に感嘆しました。
個人的には、宿屋の一幕と、それに続く居場所を失った男と二組の夫婦が一番面白くて好きです。
唯一セットを大きく動かした図書館は、照明やテンポの合わせ方も相まって、実に格好良かったです。
書架が通り過ぎる一瞬に死体が消えたのは、一体どんな動作なのでしょう。
暗転しているうちに音もなくキャストが入れ替わり、セット配置も変わっている様は、現実を観ていると言うより、正に空白に落ちた感覚です。
張り詰めた緊張感の中に、意外とふんだんなユーモアがあり、85分間大変集中した時を過ごしました。

首藤康之氏は動きがものすごいなめらか。バレエダンサーらしい美しさに、長身と野性味のある顔立ちが不思議な魅力を生み出していました。
小野寺修二氏は「間」が抜群。また、持味が小市民的で、一服の清涼剤になっているところが多くあったように思います。
新キャストの藤田善宏氏は、ちょっと主張の強さが気になりました。首藤氏と入れ替わったりする暗示的な役だと思ったので、もう少し普段は埋没してるほうがジワジワ来たのでないかしら。ただし、この舞台の求めるところとは違うかも知れません。
女性二人は、かなり個性的なキャラクター。体当たり的で、性は全然感じないのが面白いですね。

これは、実物を観ていないとまったく語れない作品ですね。観ておいて良かったと思います。

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