昨夜、NHK教育で放送された番組「劇場への招待」を録画しておいたので、観てみました。

作品は「愛と青春の宝塚〜恋よりも生命よりも〜(2008年)」。
http://www.ai-takarazuka.jp/

フジテレビで制作した同名の特別ドラマを舞台化したもの(上記の公式サイトは、2011年公演の告知に変更されています)。それをNHKで放映しちゃうのだから、良い時代になりましたよね。
なお、麻生はドラマ版は未見です。
演出は鈴木裕美。「宝塚BOYS」も担当していますし、不思議と宝塚ネタに縁のある演出家です。「愛と青春の宝塚」と「宝塚BOYS」で、戦前から戦後の宝塚の歴史をバッチリ学習できます。
映画公開した時の映像をそのまま使っているのか、舞台作品であることを余り感じさせない撮影アングルだと感じました。なにか効果を使っているのか、質感が違う感じ。
一幕は、プロローグやすき焼きの歌など、少し冗長な印象がありましたが、戦時モノだけあって二幕に入るとドラマに惹き込まれ、熱演もあってトモの死には物凄い勢いで泣かされました。
でも、見終わった感想は「スキヤキ食べたい」と言うもの凄く正直な欲求でした(笑)。

キャラクターに、やや「銀ちゃん」チックな面も感じたリュータン@湖月わたる
舞台映えする長身と厚みのある身体で眼を惹く、正にスター。ダンスでの魅せもさすがでした。しかし歌になると少し厳しいのも変わらず、なのかな。Wキャストだった紫吹淳もダンサーですし、リュータンと言う役に歌唱力は関係ない、と言うことも分かるのですが……。
劇中劇の軍服姿は現役生徒と変わらぬ「男役」っぷりで格好良いのに、その後軍服のまま素に戻って人形を毟るとか、トモのパートを女演技で演ってしまう辺りは、凄い可愛らしかったです。
タッチー@貴城けいは、美しい人だなと改めて感心しました。孤独の影を背負った「陰」の魅力がありました。
シナリオの比重の大きさからすると主人公と言って良さそうだと思ったら、ドラマでは実際に彼女が主人公だったんですね。
男役だけれど、「男装の麗人」を逸脱せず終始本質は女性だったのが、リュータンと違い印象的でした。
上昇志向のギラギラしたオーラを溢れさせていて、でもどこか神経質な雰囲気があるトモ@大鳥れい。一幕からその演技に惹き込まれました。
元々娘役だった方ですが、男役として演技する一幕前半も違和感はありません。代役のタップダンスには「男役の演じる娘役っぽさ」まで感じて驚嘆しました。
例え演じる場所が慰問地でも、そこで喝采を得られる以上離れられない哀れさが二幕のトモには張り付いていて、切なかったです。死に方が安らかなのが救いでした。
ベニ@映美くららは、空気が読めなくて、無駄に元気でウザく、技術的にはもの凄く下手で、と言う難役ですが、リアリズムとファンタジーの同居感が素晴らしかったです。
代役として影山先生が選ぶのは、見事な「華」で納得。でも、皆が飢えていた時代に芋を持って来れるのだから、もしかして地主の娘とかでカネコネがあったのかな、と少し穿った見方もしちゃいました。

一方、男性陣。
影山先生@石井一孝は、さすがの一言。
リュータンの役を演じてみせると、男性なのに「宝塚歌劇」らしい巧さで、やはりそれは彼がスターだと言う事なんだろうと思いました。
ちなみにこのシーン、リュータン自身が演じた前の演技も決して悪くないのに、新演出を観ると「こっちの方が良い!」と思える辺り、演出家って凄いです。演出って単に舞台装置の出し入れだけじゃないんですよね。
速水中尉@本間憲一は、美味しい役だと思うのですが、あまり印象は残らなかったかな。
デュエットダンスで貴城けいをリフトした位置の高さに、見惚れました。
オサム@佐藤アツヒロの演技には文句ないのですが、年齢的にこの役は厳しかったのでないでしょうか……。この時の手塚治虫が実際何歳だったかは知りませんが、学徒出陣にも入らないような少年なんですよね?
もう少し若い人が演じた方が良かったのではと思いました。

女性アンサンブルは全員宝塚OGの筈ですが、全然分かりませんでした(ちなみに、メインも含めて実際に現役時代を観た事があるのは貴城けいだけ)。
音楽学校の上級生を演っていた一人が真山葉瑠ではないかなぁと思い至った程度です。
プロローグでは、レビューなのに化粧が薄いのと、娘役も地声で歌ってるような感じだったのが、宝塚らしくないと感じましたが、普通のお芝居のシーンはどの役も良かったです。

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