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本日BSHiで放映された2007年宝塚月組公演「マジシャンの憂鬱」を見ていて浮かんだネタ。


「……あの、シャンドールさん。この方たちは、一体」
 彼女の問う声は寒さと別の要因で震えていた。だと言うのに、マジシャンの反応は首を捻っただけであった。
「あれー、紹介してませんでしたか? こっちがラースロ、ヤーノシュ――」
「いえ、そういうことではありません」
 マネージメントをする人間がいないと言う話だったから、彼女はその誘いに乗れたのだ。故郷ウェールズを見せたかったのも彼に対してだ。他の者が付いて来るなど、彼女は聞いていない。
 二人で共に同じ路を歩いて行くのではなかったのか。
「あんな連中がいるから、どんどんマネージャーが辞めちゃうんですよ。いやぁ、貴方が引き受けてくれて良かった!」
 喜ぶマジシャンの腹に、彼女が拳を突き入れたのは不可抗力であった。


お茶会レポートによると、英国行きには居候5人組も付いて行くそうです。そんな話を聞いてないヴェロニカにとっては、詐欺に遭った気分ですよね!

シナリオの肝である事件に関しては深く考えない方が面白いと分かっているので、それ以外の良いところだけ楽しみました。
ここでこの台詞だ、と分かっていても安定して面白いのは良いコメディですよね。ジグモンドとラースロの小芝居「お前を食べちゃうぞー」の下りは、正塚演出なのでアドリブではないと思うのですが、記憶になかったので、不意打ちでひっくり返りました。
殿下は、初見の時は「最初はマトモでダンディな人だった」と思っていたのですが、中盤以降の展開を知っている状態で見ると、初登場時から結構問題のある人だったと分かり妙に感心しました。段々と実際に力を取り戻して「元気100倍!」になっていくのが愉快。見ている程に霧矢のファンになってしまうのが恐ろしいところです。でも大空祐飛が不在でも月組を見る原動力になるので、良い事なのかも。お財布には打撃、且つ「Me and My Girl」の先行チケット抽選に悉く外れて落ち込み中ですが。
舞台は生が一番楽しいと思っていますが、後ろの席からでは細かい演技が分からないので、放送は嬉しいですね。マレーク@城咲あいが心を失っている表情などは、ハイビジョンで見る価値がありました。

この舞台が面白いのは、この時点の月組は層がもの凄い厚く、間の演技が巧い役者が揃ってる御陰だと思います。でも、盆を巧く使って場面転換をスムーズに繋いでいるところや、1場ごとが程よいテンポでダレずに進むのは、やはり正塚先生の腕前かと思うので、次回雪組公演の脚本も期待してます。
今度は辻褄の合わない部分がないことも願いつつ。

寝ようかと思ったところで、自分的天変地異が起きました。

大空祐飛 2008年1月26日付で花組へ組替え

と、と、と言う事は、来年2月から始まる月組公演「ME AND MY GIRL」に、祐飛は出演しないと言う事ではないですか!
観劇予定をどうしよう、と混乱を来しています。
大空祐飛が月組に居続けると言う思い込みは、妄想に過ぎなかったのですが、入団時から月組で育ったのだから、このまま月一筋だと安心していたのですよね。
何より、花組は真飛聖が新トップとしてこれから組をまとめ直す段階で、お互いに気を遣う事になりそう。
とすると、複雑なのは花組ファンの方かしら。

ちなみにこの人事、思い返すとかなり以前から設定されていたと思われます。根拠は「宝塚スケジュールカレンダー(手帳)2008年版」。
購入していないので定かではありませんが、確か花組スター情報に真飛しか載っていなくて、壮一帆は繰り上がれば二番手の筈なのに、どうして掲載されていないのか首をひねったのですよね。
大空が異動してくるのであれば、学年からみて仕方ないかと。
ああ、壮ファンも複雑。

(23:20追記)
公式のスターファイルがいつの間にか、主演男役と娘役だけに差し変わっていました。
組み替えを示唆しての物だったのか。或いは、これからまだ大規模な発表があるのかも。

マジ鬱語り、と書き出すと「どんな嫌なことがあったのか」と仰天されそうですが、ミュージカル「マジシャンの憂鬱」のことですのでご心配なく。
と言うわけで改めて、昨日の劇部分に対する感想です。

端的に言うと、アテ書き作品って、要するに役者に似合ったキャラ付けに対して萌える作品なんですね。
シャンドールは紳士的でスマートな、悪意なき詐欺師。
「だますのが辛い」等と歌っても深刻な苦悩ではなくて、全体的に飄々としている感じ。でも完璧なわけでなく、人間として等身大。そしてマジシャンとしても違和感のないキャラ作りでした。
嘘をつきまくっているので、全然誠実ではないのですが、憎めないと言うのは凄いキャラクターですよね。トラブル巻き込まれ型主人公だから、許せるのかな。
対して皇太子殿下は、劇画的。初登場時は打ち拉がれているので、マトモな人間かと錯覚するのですが、周りの人間(主にシャンドール)のパワーを吸い取ってどんどん元気になっているように見えました。もっとも、マレークを取り戻してからは落ち着きを取り戻し、初登場時のように変な発言したりもしなくなったので、ノイローゼでネジが奇怪しくなってただけかな。

さて、ジグモンドは事前に小耳に挟んでいた通り、比重が軽い役であることは正直否めませんでした。居候は5人もいるし、その中で一目置かれていると言うわけでもない。
ただ、これが正塚脚本に置ける大空祐飛へのアテ書きなのかも知れないのが恐ろしいところ。なんせこの男、透視詐欺を止めると言い出したシャンドールへ、思い直させるために放つ台詞が「大好きなのに」。それはジグモンド側の感情であって、シャンドールの行動原理に関係しないと思うんですけど、これを役者2人の関係性に当てはめると納得してしまうのが……恐ろしい現象です。
酒場に撒いたはずの侍女たちが現れた時、凄い嫌そうな顔だったのも、今の仲間との生活を崩されたくないんだろうなぁ等と、語られないのを良いことに勝手に行間を読んで保管できるキャラだったので、今回はこのくらいの扱いで良かったのかも知れません。

キャラ萌えで楽しんだけれどそれでも物足りないのは、肝心のキャラ数でしょうか。名のついている役は皆キャラ立ちしていて素敵なのですが、名もないモブが圧倒的に多い。
アテ書きとしては成功していると思うので、もっと多くの月組生に名のあるキャラを作ってあげていれば、組ファンの全体に喜ばれたのではと思います。それこそ、お話の粗に目をつぶれるくらいね。

宝塚月組UCカード貸切公演「MAHOROBA/マジシャンの憂鬱」15:30回。
本日は初宝塚観劇のこたつきさんをお誘いしました。私自身、月組も貸切公演も初めてなので、ある意味初めて同士であります。

初めての月組ですが、一番馴染みのある雪組でも顔を見分けられるのは凰稀かなめくらいまでなので、組子に馴染みがないのは案外気になりませんでした。
目当ては大空祐飛。今回の席、Sにしてはやや後方で顔が遠いのは残念でしたが、その代わり舞台に立っているキャストと同じくらいの目線なので、銀橋で演技する祐飛と目が合う錯覚があり思わず頬が緩みました。

今回の舞台はショーが前半の変則構成。そんなわけで、感想はまず「MAHOROBA」から。
このショーでは、主役たちは通し役で、合間に台詞もあるなど、なんだかダイジェスト版ミュージカルという感じでした。
日本神話は、個人的に大変縁遠いジャンルなので、筋がほとんど把握できなかったのが残念です。踊りや演出は、宝塚と言うより京劇のイメージ。天女の衣装や色使いは綺麗でしたけれど、宝塚のレビューには見えませんでした。何より、娘役の出番があまりに短く報われないもので、デュエットダンスもないので(後でフォローされてましたが)ビックリ。
東国討伐で日本武尊たちが倒れるシーンは、まず最初にサダル@大空祐飛が倒されたことに凄く納得。贔屓目で見ても、一番弱そうでしたから。しかし剣を抜いたサルメ@霧矢大夢が余りに強く、隙がないので負けそうに見えないと思っていたら、なんと小碓@瀬奈じゅんの為に剣を投げ寄越し、自分は空手で戦うと言う……男前なサルメには思わず惚れました。
逆に、小碓に対しては剣をなくすな!と叱咤したい気持ちでいっぱいだったのですが、その後の訥々としたソロには、「帰りたい」と言う情感があり、胸に来ました。
あと、日本神話で強い敵を倒すときは、かならず酒で酔わせて寝首を掻くんだなぁと、なんだか納得。

さて、かすりもしない抽選会+休憩を経て、後半はミュージカル「マジシャンの憂鬱」。
キャッチーなタイトル&正塚脚本、と言うことで期待していた通り、面白かったです!
悪い評判も聞いていましたし、実際後半の畳み方はいかがなものかと思うのですが、初宝塚のこたつきさんを連れている自分としては、「普通に笑えるコメディで良かった」と言う評価になりました。
お話としては、後半超展開ですし、そもそもの前提が論理的でなかったり、時代考証が無茶苦茶、何よりご都合主義すぎるのですが、とりあえず初見では印象が大事なので、その意味では良かったと思うのです。
何より、キャラ立てが凄い。これこそ正に座付き脚本家ならではのアテ書き。
シャンドール@瀬奈じゅんは、自然にマジシャンらしい演技をしていて格好よかったです。役は少しヘタレなんですけれどね。一方の皇太子@霧矢大夢は実に「パッショネート」で、ヒートアップしていく過程が凄い良かったです。この人、自国を民主主義国家にする夢を抱いて正解ですよ。彼が国王になったら政治が破綻するもの。
突っ込みどころは多々あるのですが、恐らく既にご覧の方はもう突っ込み飽きてると思うので、その辺を避けて気になったところを。

・「コンゴから帰って来た甥」は本物なのか。
このくだり、ちょっと台詞がよく聞き取れなかったのです。
妙に挙動不審だったけどあの甥は本物なのか?と、こたつきさんと話し合った結果、あれはジグモンド作のロボットじゃないかと言う事になりました。

・「シャンドール」はいつマジックを仕込んでいるのか。
作中数回、シャンドールは純粋なマジック技を見せます。「瀬奈じゅん」は、勿論舞台に出る前に仕込んでいるんですが、では作中の「シャンドール」は、いつ仕込んでるの? ヴェロニカの涙を拭ったハンカチは、どういうつもりで用意していたんだろう、と思うと何だか面白いのでした。

地元のある店で、買い物をすると宝塚月組東京公演のチケットが当たるというキャンペーンを打っております。
その公演回は、確認してみたところ貸切公演でも何でもない通常公演日なのに、チケットを押さえたのでしょうか。そういうことも出来るんですね。
でも、いままで宝塚なんて関係した事もない店なのに突然キャンペーンを行い、しかもそれが月組公演ということで、天が私に今回の月組公演は見ろと告げているのだろうか、と不思議な気持ちにさせられました。