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五十音順キャラクター・ショートショート【め】
→ルールは2012年12月17日記事参照


 面倒を起こしたのか、面倒の方から寄ってきたのか。
「そういう違いは重要じゃありませんわ」
 彼女はそう言い切った。
 己こそ被害者であると彼是訴えていた男の口が、中途半端に開いた状態で止まる。
 彼が驚いているのは分かる。彼自身が起こした事件とそれ以外とを切り分けるのは査定の大前提で、それこそ彼女の仕事なのだから。
 けれど、この問題だけは別の真理があるのだ。
「故意でも不可抗力でも、乙女の着替えを覗いた時点で、一律に悪いんですわ!」

明快な裁決
……メリル・ストライフ(漫画「トライガン」)


要するに、この世に「ラッキースケベ」なんてない。スケベはすべてスケベである。
と考えると、テイルズオブシリーズでは誤解から名付けられることの多い「スケベ大魔王」称号も、間違いではないのかも。

このお話は、メリル視点なのでここでお仕舞いです。
もしヴァッシュ視点なら、この後、周囲から「別れ話が拗れてるみたい」とヒソヒソ邪推されながら、どうして女子部屋に突撃する羽目になったかを弁明するほどにドツボにはまっていく……というお話になるんじゃないでしょうか。

遂に、完結!
表紙の絵を知らなくて、本屋の平積みから探すのに時間がかかりました。ヴァッシュの顔ドアップだとは思わなかったし、見ても、笑顔が久し振り過ぎて、彼の顔だと思わなかったのです。
コミックス刊行スピードが遅く、何度も前巻の内容を忘れたり、何度も挫折しようと思いましたが、一応無印の「トライガン」から追い続け、10年の歳月を経て終わりを迎えたことになんとも言えず感無量です。
思えば、全巻揃えてある好きな長編作品は数あれど、「銀河英雄伝説」等は当然完結後に読み始めたし、「ロトの紋章」は知った時には連載終盤だったので、リアルタイムで最初から最後まで追ったのは「パトレイバー」と本作くらい。ゆえに感慨もひとしおです。

最後なので、告白。
趣味が悪いのであまり公言していませんでしたが、レガートの狂気っぷりが好きでした。
「これは愚弄だ。僕の命に対する愚弄だぞ。撃て!」
彼にとっては、それが事実だったのだと思います。

そんなわけで、最終刊で一番重かったのがこの話でした。まったく別のシーンを持ってきて出だしに据え、締めで繋げる展開は、これまで何話かくり返された手法ですが、とても好きです。
銃で撃てば人は死ぬ、と分かっていて引金を引く重み。ウルフウッドと同じ立場に立って、ヴァッシュは涙する。でも、決断を悔いはしなかった事に救いを感じます。突然脳裏に浮かんだのだろうウルフウッドの笑顔は、かつてモネブを殺そうとした瞬間浮かんだレムの姿との対比でしょうか。状況と、結果と、すべて逆と言うのが面白いです。
もっとも、レガートに限っては、ヴァッシュによってもたらされる死こそ望んでいた以上、アニメも漫画も、この結末以外有り得ないと思います。
ちなみに、レガートの能力は念動力であって欲しいと心から思っていたので、13巻では本当に拍子抜けたのですが(逆に風魔の小次郎では「サイキックソルジャー」とか言い出されて吹きました。あれこそ糸操縦能力にすべき)、今回、再度レガートの糸は念動力だと勝手に確信しました。糸で操作できる範囲を超えてますもの。
後半のヴァッシュはずっと追いつめられていた感があるので、レガート戦の最後の決断で振り切れてしまったのは納得です。
ところで、レガート戦のナレーションは、ちょっとトライガンとしては浮いていた気がします。モノローグは頻繁にあったけれど、ナレーションは初めてでは?

レガートで随分気持ちを持っていかれたので、ヴァッシュとナイブズの直接対決は、プラントの分離シーンを含めても意外に短くて驚きました。
その前のヴァッシュVSレガート、リヴィオVSエレンディラが長かったから、戦闘能力を最大限に駆使した戦いの描写はやり尽くしたと言う事でしょうか。
それでも、最終話を前に決着がついていたとは、驚きました。

そして最終話。
賞金首ポスターに、ナイブズ版が増えていておかしいことこの上無し。写真なのか、絵なのか。あんな写真を撮ってあるとは思えないから、やはり絵でしょうか。誰が描いたのか知りませんが、巧くヴァッシュとナイブズを描き分けてますよね。
ナイブズは結局どうなったのか、明確には示されませんでしたが、輪郭がぼやけ、マントだけを残して消えた描写からは、死を暗示しているように思います。融合体を失った時点で既に黒色化が進んでいたので、仕方のないことかと。しかし結果として、ナイブズは独りにならなかったけれど、ヴァッシュは独りにされてしまったと言う事実が残るんですね。転じて、そんなヴァッシュを独りにさせない為の「ふりだしに戻る」大団円エンディングなのかも知れません。
13巻の時点では、ヴァッシュに残るものは死しかないと思っていましたが、ドタバタな日常への回帰と、その笑顔に、日々は続くけれど、戦いは終わったんだなと感じました。

最後に頑張ったで賞。
地球連邦のパンセさんは、終盤に登場したサブキャラなのに偉い人だなぁと感心しました。自分の命を賭けることに対して、焦燥や不安は見せても「その為に私はここにいるんですよ」と答え最後まで逃げなかった言動は、19年度麻生的尊敬する等身大の人ベスト3に入ります(たった今思い付いたランキングであり、何の権威もありません)。

また二年以上後に最終刊と2巻同時発売とかだろうと思い込んでいたため、発売されていた事に気付かず入手が遅れました。二件目の本屋で確保。
表紙はここで表紙にならないと出番がないので納得のリヴィオ。妥当なので、10巻・12巻ほどのインパクトはありませんが、本誌連載を追っていない麻生としては、リヴィオって白髪キャラだったのか、とそこに吃驚しました。

内藤泰弘氏の描く戦闘シーンは、動きが分かり難いと思います。10巻は何度も読み返してようやく大体のコマの意味が理解できた気がしたけれど、他の巻はそこまで読み込んでいないのでお手上げ。
そんな私なので、今回のようにほぼ全編バトルシーンだと、ページ数の割に話が動いていないのと状況が理解出来ないのとで頭がぽーっとなってきます。
というわけで、リヴィオのエレンディラ戦はほとんど理解不能でした。もうここまでくると最終刊への繋ぎ戦闘の印象なので、ちょっと惜しかったかも。
一方、ヴァッシュのレガート戦は、レガートの絶望を内包した狂気や、銃身を銜えるアクション、そして真っ黒になったヴァッシュと言う感じでツボを外さず、白熱。次巻早々に決着は提示されるのでしょうが……。
あ、ジュライの時のレガートの若さには戦きました。
それにしても、レガートの能力は、糸より念動力であって欲しかったなぁと今も思います。

地球船団からの使者が、直接地表に降りてきた事には、素直に意表を突かれました。
やはりナイヴズが取り込んだ他のプラントたちの存在が、彼との決着の手段になるんですね。

第一期アニメの方で、既に終焉を描いている物語を、後から原作が追い掛けているトライガン。
レガートとの決着とそれが引き起こす物は、アニメをなぞる事になるのでしょうか?
物語自体のラストは連載確認済の方々から色々聞いてますが、コミックスでの結末を期待しています。勿論カラーで。