遂に、完結!
表紙の絵を知らなくて、本屋の平積みから探すのに時間がかかりました。ヴァッシュの顔ドアップだとは思わなかったし、見ても、笑顔が久し振り過ぎて、彼の顔だと思わなかったのです。
コミックス刊行スピードが遅く、何度も前巻の内容を忘れたり、何度も挫折しようと思いましたが、一応無印の「トライガン」から追い続け、10年の歳月を経て終わりを迎えたことになんとも言えず感無量です。
思えば、全巻揃えてある好きな長編作品は数あれど、「銀河英雄伝説」等は当然完結後に読み始めたし、「ロトの紋章」は知った時には連載終盤だったので、リアルタイムで最初から最後まで追ったのは「パトレイバー」と本作くらい。ゆえに感慨もひとしおです。

最後なので、告白。
趣味が悪いのであまり公言していませんでしたが、レガートの狂気っぷりが好きでした。
「これは愚弄だ。僕の命に対する愚弄だぞ。撃て!」
彼にとっては、それが事実だったのだと思います。

そんなわけで、最終刊で一番重かったのがこの話でした。まったく別のシーンを持ってきて出だしに据え、締めで繋げる展開は、これまで何話かくり返された手法ですが、とても好きです。
銃で撃てば人は死ぬ、と分かっていて引金を引く重み。ウルフウッドと同じ立場に立って、ヴァッシュは涙する。でも、決断を悔いはしなかった事に救いを感じます。突然脳裏に浮かんだのだろうウルフウッドの笑顔は、かつてモネブを殺そうとした瞬間浮かんだレムの姿との対比でしょうか。状況と、結果と、すべて逆と言うのが面白いです。
もっとも、レガートに限っては、ヴァッシュによってもたらされる死こそ望んでいた以上、アニメも漫画も、この結末以外有り得ないと思います。
ちなみに、レガートの能力は念動力であって欲しいと心から思っていたので、13巻では本当に拍子抜けたのですが(逆に風魔の小次郎では「サイキックソルジャー」とか言い出されて吹きました。あれこそ糸操縦能力にすべき)、今回、再度レガートの糸は念動力だと勝手に確信しました。糸で操作できる範囲を超えてますもの。
後半のヴァッシュはずっと追いつめられていた感があるので、レガート戦の最後の決断で振り切れてしまったのは納得です。
ところで、レガート戦のナレーションは、ちょっとトライガンとしては浮いていた気がします。モノローグは頻繁にあったけれど、ナレーションは初めてでは?

レガートで随分気持ちを持っていかれたので、ヴァッシュとナイブズの直接対決は、プラントの分離シーンを含めても意外に短くて驚きました。
その前のヴァッシュVSレガート、リヴィオVSエレンディラが長かったから、戦闘能力を最大限に駆使した戦いの描写はやり尽くしたと言う事でしょうか。
それでも、最終話を前に決着がついていたとは、驚きました。

そして最終話。
賞金首ポスターに、ナイブズ版が増えていておかしいことこの上無し。写真なのか、絵なのか。あんな写真を撮ってあるとは思えないから、やはり絵でしょうか。誰が描いたのか知りませんが、巧くヴァッシュとナイブズを描き分けてますよね。
ナイブズは結局どうなったのか、明確には示されませんでしたが、輪郭がぼやけ、マントだけを残して消えた描写からは、死を暗示しているように思います。融合体を失った時点で既に黒色化が進んでいたので、仕方のないことかと。しかし結果として、ナイブズは独りにならなかったけれど、ヴァッシュは独りにされてしまったと言う事実が残るんですね。転じて、そんなヴァッシュを独りにさせない為の「ふりだしに戻る」大団円エンディングなのかも知れません。
13巻の時点では、ヴァッシュに残るものは死しかないと思っていましたが、ドタバタな日常への回帰と、その笑顔に、日々は続くけれど、戦いは終わったんだなと感じました。

最後に頑張ったで賞。
地球連邦のパンセさんは、終盤に登場したサブキャラなのに偉い人だなぁと感心しました。自分の命を賭けることに対して、焦燥や不安は見せても「その為に私はここにいるんですよ」と答え最後まで逃げなかった言動は、19年度麻生的尊敬する等身大の人ベスト3に入ります(たった今思い付いたランキングであり、何の権威もありません)。

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