有川浩「図書館戦争」シリーズ読了。
1巻の感想は、2011年10月11日記事参照。
軽妙な文体とスピード感のある展開で、楽しく読めました。
物を書く人間としては、背景になる対象をよく調べたうえで、蘊蓄語りに偏ることなく作中で生かしているところに、プロの仕事を感じました。
1、2巻の段階では、言語規制の問題に解決策を提示できるとは思えず、「図書隊」対「良化特務機関」という舞台上で、郁と堂上の恋愛話を展開していくのかと考えていました。
それが3巻で、図書隊だけでなく市井の問題として取り上げられ、その発展として4巻ではより良い未来が見えてきたところでエンドマークが付くという、全面的なハッピーエンドでした。
放送局の連盟だとか、現実はそんな巧く運ばないと思いますが、物語なのだから素敵なご都合は歓迎です。
それに、主人公の心情としては「王子様に憧れて正義の味方に志願」したわけですから、世界全体をハッピーエンドに導く活動をした上で、自分の恋を掴む方が清々しいですよね。
安易に恋愛路線へ流れなかったことが、最後まで「続きはどうなる?」とワクワクできた一因だと思います。
などと言いつつ、基本的には郁と同じく「キャラ読み」で読ませていただきました。
メインキャラは1巻の時点でほぼ出揃っていたので、大きな印象変更はなし。
最初は気恥ずかしかった郁の熱血キャラですが、3巻では人間的に成長したと感じて好感度が上がりました。
2巻から登場の手塚兄は、「敵から味方になったらパワーアップ」した感があり、その点は面白いと思いました。
少しだけ注文を付けると、中盤から、柴崎が便利過ぎる扱いなのが少し気になりました。
情報部の候補生という話もありましたが、公的には単に郁と同室というだけですよね。情報部が正式に発足したという話は記憶がありません。そんな彼女が、特殊部隊の張り込みや囮捜査に参加しているのは不自然に思いました。
初期には、柴崎が参考人として会議に呼ばれるなど理由付けがあって、ご都合だと思いつつも納得させられたのですが、段々いることが自然な扱いにされていました。
いっそ特殊部隊に配属させちゃった方が、個人的にはスッキリしたかな……と思います。
ま、重箱の隅でした。