最終回。お芝居のラストまで。
【2幕第15場 本当のリック】
リックは自分の道を決心する。ルノーを呼び出したリックは、通行証を物的証拠に、ラズロに外交官殺害の罪を着せて捕まえ、自分はイルザと共にカサブランカを発つと言う目論見を話す。
東京公演では、リックが伴奏の合図を出すのがどんどん遅くなって、凄い長いタメがあったのですが、DVDではスムーズに前場から繋がっています。
1回目の「本当の俺はどう生きる?」と言うフレーズに大変強い力が籠っていて、リックが自分の道を全力で模索していることがダイレクトに伝わりました。
元々リックは国外退去命令を受けた身ですから、米国を目指してもリスボンまでしか行けない。だから、平和な土地=米国へ逃げて欲しいと言うラズロの頼みを叶える事は、元々不可能なのですよね。
リック自身も、イルザの愛を手に入れた後のことは考えていなかった気がします。だから想いが通じ合っていたことが分ければ、それで満足して、その先へ進む事が出来たのではないでしょうか。
【2幕第16場 カフェ(最後の夜)】
リックはラズロをルノーに差し出すと見せ掛け、彼を脅して空港に連絡させる。しかしルノーはシュトラッサーへの直通ラインに電話を掛け、異変を示唆する。
ルノーが出し抜かれたと思いきや、一発逆転の電話をかける瞬間は映画では緊迫のシーンですが、この舞台版ルノーだと、ここで少佐に電話したことに少し違和感を感じます。映画のルノー署長はリックをどう思っているのか、ラストシーンまで分からないし、そもそも本人も判断していなかったと思うのですが、北翔演じるルノー大尉はリックを好きなのが最初から明確なので、少佐に引き渡しそうにないと思ってしまうのです。
【2幕第17場 空港】
リックは通行証にラズロとイルザの名前を書き込ませ、二人を飛行機に乗せる。遅れてシュトラッサーが到着し、飛行機を止めようとしたので、リックは発砲する。ルノーはリックを検挙せず、レジスタンス基地へ送り届ける。
飛行機に乗るように諭されたイルザの右目に、涙が浮かんでいるのは良いのですが、ちょっと鼻水出てますよね……?(笑)
「泣き」の芝居で本当に涙を流すことが良い芝居だ、とは私は思わないのですが、それでも野々の素晴らしいタイミングで流れる涙は凄いと思うし、洟垂らしちゃうと言う事は、技術的に泣いてるのではなく本当に感情が昂って泣いてる訳だから、ある意味毎公演その役になりきれる彼女は、もの凄い「北島マヤ」だなと感心します。
映画のリックは、大尉と一緒に歩いて行くラストだったので、舞台版は「明日からの人生を独りだけで生きて行く」のが少し寂しいです。
でも、大尉を残す事は可能なのにリック一人のラストシーンに変更したのが、プロパガンダ映画から宝塚らしいラブストーリー芝居へ変更するための一つのポイントだとも思います。
一幕でヴィシー水の比喩を語っておきながら、最後にそれを活かさない事に疑問もあったのですが、DVDを繰り返し観ている内に、その変更も政治色を抜くためだと感じるようになりました。もっとも、それなら比喩も外すべきだったのかも知れませんが、多分そこは「砂漠で水が飲みたくて」と言う受け答えをさせたかったんじゃないかと邪推しております。
この後フィナーレがありますが、感想は割愛。これにて「カサブランカ」DVD感想を終了したいと思います。