宝塚宙組「誰がために鐘は鳴る」VISA貸切16:00回観劇。

1階後方センターだったので、全体によく見えました。

今回は遠征しなかったので、ようやくMy初日です。
宝塚大劇場から演出が変わって良くなったらしいという噂を聞いて、若干期待値を上げて観てしまったのが、正直失敗だったかな……と思います。
演者の熱演に対して、演出・脚本が足並み揃わず上滑りしている印象を受けました。
二時間半の間に三回も泣いておいて、開口一番それか、と言われそうですね。
しかし演出を良くすれば、もっと良い作品になると言う歯痒さがあるので、ちょっと考えてみました。

案1.バレンシアの回想への入り方を変更
ピラールの「バレンシアは良かった!」の台詞の直後、回想開始。回想を破って、エル・ソルドが「じゃ、行ってくるぜ」と声を掛けて去って行く、と言う形の方がテンポが良いと思います。

案2.二幕冒頭の結婚式とアグスティンのソロをカット
突然始まる幻想シーンに、同行者は「山の中であんなドレス持ってたの?」と戸惑っていました。意味のないシーンで、むしろ一幕ラストの涙が吹っ飛ぶ内容なので、カットを要請します。
衣装替えの時間稼ぎと思われるアグスティンのソロも、唐突すぎるので不要。アグスティンには、別の歌を作れば良いと思います。取り敢えずの代案としては、三日目の夜にロバートとマリアを背景として「彼にならマリアを任せられる」と信頼を寄せる歌等いかがでしょうか。

案3.アンドレスの伝令にルチアを付いて行かせない
二人が雑談しながら進む為に、伝令の緊張感が失せていると思います。更に場面転換時の「アンドレスとルチア〜♪」と言うコーラスも、少々間が抜けていて、二回目に至っては笑いそうになって慌てました。
アンドレスには、銀橋で「伝令に出されて正直ホッとした」と言う心情を吐露しつつ自責するソロを作れば、見せ場にもなるので問題ない筈。

案4.負傷したロバートを引き摺るシーンで盆を回す
撃たれた現場からほんの数cmロバートを運んだだけで演技が進むので、折角熱演してるのに「そこに集まっていたら皆銃撃されるのでは?」と言う突っ込みが観客の頭を占めてしまいます。
別れや最終シーンの為に位置は舞台の真ん中のままにしますが、盆を回す事で景色を変え、場所を移したのだと思わせられるはず。

案5.BGMを入れる
無音の中で芝居させることが多いのですが、ミュージカルなのでもっと音楽の力に頼って良いと思いました。
この辺の、芝居シーンとミュージカルシーンが分離しているのが昭和演出なのでしょうか。

やってみたら今の方が良かったりするかも知れませんが、自分で演出を付けられるなら、こんな感じにしてみたいかな、と思います。
逆に、1幕のマリアの回想は巧い演出だと感じました。

以下は、役の感想です。
役が少ないので、1回観ただけでは語り辛く、メイン処だけです。

再び任務を果たして死ぬ軍人のロバート@大空祐飛。
格好良いのは私にとって特筆するまでもないことですが、白シャツ姿の美しさには参りました。
あと、パンフレットに載っている最後の機関銃を構えたアップを、何度も見返しています。一人のアップで見開きは珍しいですよね。でも確かにこの写真は、このサイズで載せたいと思う素晴らしさがあります。
有能で強い男が、マリアやアンセルモ等と二人でいるときの眼差しの優しさが好きです。
それにしても今回、「いちゃいちゃ」と言う擬音が聞こえそうなラブシーンの連発には驚きました。寝袋のシーンはオペラグラスが手放せません。

マリア@野々すみ花は、とにかく可愛い! トップになって初めての当たり役でないかと思います。等身大で、健気なのが堪らないですね。
もっとも、理屈で考えると、暴行された少女が男性に一目惚れして積極的に恋を打ち明けられるとは思えないのですが、どういうわけか理屈を越えた説得力があり、野々の底力を観ました。

難役のパブロ@星原美沙緒。私がこの役に当たったら、初日までに脱走していると思います。複雑な内面が良く出ていて感服しました。

花組トップが決定済のアグスティン@蘭寿とむは、ひとまとめにされがちなゲリラ隊の中で、やはり目立つオーラがありました。フィナーレの扱いはWトップかと思ったけれど、それも納得です。
しかし蘭寿に重く「俺もあの娘がずっと好きだった」と言われると、十数年の恋を横からかっさらったような罪悪感を感じるのですが、実は数ヶ月先に知り合っただけですよね(笑)。

アンドレス@北翔海莉は、一言で言うと地味。正直「この人ならもっと出来るはず」と言う信頼感と歯痒さがありました。
スターである以前に役者として巧いがゆえに、与えられた役が小さいと、その小ささに纏まってしまうのでしょうか。ダンスにも覇気を感じなかったので、少し心配です。体調不良などでなければ良いのですが。

原作の時点でかなり好印象だったアンセルモ@珠洲春希は、若いのに自然な老人演技で素晴らしいと思いました。
ロバートとの信頼関係も実は美味しいですよね。
あとは、サラ@鈴奈沙也が最上級の男に相応しい良い女でした。ホアキン@凪七瑠海は、相変わらず少年役ですが、良かったです。

フィナーレの三人銀橋渡りで、春風弥里の指先から迸って見える気迫に眼を奪われました。「銀ちゃんの恋」以来、ダンスの時に全力で魅せに来てる印象です。階段降りの順番にも感動しました。
細かいところでは、祭りの歌手@百千糸が上手いと思いました。今回に限って言えば、七瀬りりこより好きです。歌姫チームでは、全体的に純矢ちとせのキーが合ってない気がしました。

次回観劇は来週。今度はもう少し下級生の出番を予習してから観劇しようかな、と思っています。

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