• タグ 『 誰がために鐘は鳴る 』 の記事

大空祐飛さよなら特集2日目。

いきなり時系列を飛ばして6作目、宝塚大劇場&東京宝塚劇場公演「誰がために鐘は鳴る」。
→公演詳細

2番手・蘭寿とむとようやく組み合う芝居ができた、と思った1本。
持ち味、芸風の違いから「異種格闘」なんて言われていたらしいですが、私は大空&蘭寿コンビで観たいものが色々ありました。
観始めた当初は古典過ぎて退屈だと思ったものですが、どんどん深化して号泣させられた素晴らしい舞台でした。楽曲も気に入っています。

と言うわけで、イラストは当然このシーンです。

友情

ちなみにこの絵は、ロバート側から描き出してしまったため、描き終わる時には右手がこすれてロバートが黒ずんでしまいました。
御陰で、描いた時間より修正に割いた時間の方が長かったです。

千秋楽に行けないので、DVD「誰がために鐘は鳴る」を観ていました。

今回のカメラアングルは結構優秀でストレスなく楽しめています。舞台の広さがカメラで切り取られる分、演出の不備が緩和されて芝居の芯が浮かび上がってきて、なかなか面白いです。
アンドレスとルチアが、デュエットソングで銀橋を通らないことに驚きました。あれは東京公演後半になって演出を変えたのではなく、東京公演で一旦演出を変更したものの、やはり奇怪しいので戻したと言うことだったんですね!

観劇時から、アレハンドロ隊の伝令のことが気になっています。
潜入2日目の日中、ロバートが到着する前に「セゴビアに敵が集結してる」と言う情報がエル・ソルドに届けられます。同じ情報をパブロ隊にも伝えに行った者がいると語られますが、ロバートがパブロ隊のキャンプに戻った後、その話が出る下りは描かれません。
2日目の朝から敵の動きを警戒していたロバートですが、張り番だったアンセルモ老が「敵の動きは大した事はなかった」と告げたこともあり、総攻撃の計画が漏れている確信を得るのは3日目昼になります。
仮定の話ですが、アレハンドロ隊の伝令をロバートが知っていたら、もっと早く作戦本部へ伝令を出し、爆破実行は無事中止になっていた可能性もあるのでは、と思ってしまいます。
なぜ、伝令はロバートに伝わらなかったのでしょうか。
もしかすると、伝令はパブロが受けたのではないか、と考えています。アレハンドロ隊のメンバーは、パブロがリーダーを降ろされた事を知りませんし、前日のようにパブロが外で昼寝していたなら、アグスティン等に知られず一人で知らせを受けた可能性があります。
しかし、パブロが情報を隠匿したのだとしても、疑問は残ります。総攻撃の意味がなくなれば、パブロが反対している橋の爆破も中止されると、彼なら想像できた筈。その計算よりもロバートへの反発が勝ってしまったと言うことなのでしょうか。
まったく描かれていない想像の展開ですが、色々考えさせられます。

なお、原作にはアレハンドロ隊の伝令と言う存在はなかったと記憶していますが、舞台では、伝令と行き違ってしまったのがロバートの手相に現れていた不幸の一つ、として機能してるのかも知れませんね。

宝塚宙組「誰がために鐘は鳴る」VISA貸切11:30回観劇。

まだ3回目なのですが、これで手持ちチケットは最後です。
約2週間前に初めて観た時は、正直「これをリピートするのは辛い……」と思ったのですが、二度三度と観る程に深まって面白くなって行きました。あと1回観ても良かったかな。
敵役が登場しない(回想以外)お芝居なので、メリハリに欠ける感はあるけれど、その分宙組と言うカンパニー全体が仲間になって一つの事業――作中は爆破工作であり、現実には公演――を成し遂げると言うまとまりがあったのが良い作用を生んだのかな、と思いました。
あと今日は、いつもだとマイクに入るか入らないかの声が割と聞こえて、細かい芝居まで見えて面白かったです。

とにかく一幕からガンガン泣いてしまいました。エル・ソルドがパコへ歌う「何故戦うのか」と言う歌で既に泣いてしまったのは、自分でも驚き。
それだけ揺さぶられたのは、役者の熱気の影響も大きく、一幕ラストのエル・ソルド隊全滅シーンでは、アグスティン@蘭寿とむの頬が、男泣きでがっつり濡れて光っていたし、二幕の別れのシーンでは、マリア@野々すみ花が泣きじゃくるあまり鼻水垂らしながらの熱演でした。ロバート@大空祐飛は、裏切り時に思わず激昂するシーンの芝居が、前回までは決定的な瞬間までも苛々し始めてるのがわかりましたが、今日は振り切れるまでは凄く抑制した感じに変わってましたね。前の演技の方が分かり易いけれど、今日の演技の方が「極めて冷静なインテリ」ではあるかな。
そのタフで冷静な男が、爆破成功後、マリアと再会した瞬間に顔がぱっと輝いたのが劇的でした。
先日まで控え目過ぎて歯痒かったアンドレス@北翔海莉が、ショー的なシーンでは役を捨ててスター性を表に出してきたように感じました。彼が本気で踊り出すと、下級生スターではやはり太刀打ちできませんね。
前回原作の雰囲気を纏いつつあると感じたラファエル@悠未ひろは、「殺しておけば良かったんだ」の台詞などに男の色気やエロスがあって、昼の情けない顔とまったく違う表情があって格好良かったです。さり気なく2度もマリアの肩を抱いてるのも、役得と言うか、美味しいですね。

以下は、前回までに触れなかったキャストを中心にざっと。
パコ@星吹彩翔は、12歳にしては成長し過ぎと思っていたのですが、やはり演技派だと思い知りました。やりすぎることはなく、でもキャラとして必要な印象付けをきちんとしてると思います。
ベソをかいたり頬を引っ張られるファニータ@藤咲えりが可愛過ぎて、毎回悶絶。「べちゃくちゃ喋ったりしない」と言う台詞回しが、実に「べちゃくちゃ」した感じで(笑)、上手いな〜と思いました。
ゲイロードホテルは、女性陣の衣装が気取っていて目の保養ですが、ドロレス@愛花ちさきはその中でも「高そうな女」感があって、それでいてロバートへの想いも伝わる情感があり、とても好きです。彼女は、短期間で随分美人になりましたね。
ルチア@すみれ乃麗は、ホアキンを嗜めるお姉さんぷりと、パブロ隊に駆け込んできたときの芝居が良かったです。特に、後者のシーンで私の涙腺を決壊させるのは、彼女の「早く行って!どうしたの、みんな!弟もいるのよ!」と言う下りだったりしました。
いつも二人がごっちゃになる歩兵@蒼羽りく&愛月ひかるも、最後なのでちゃんと確認しました。美形なのに役立たず感が漂う兵士っぷりが良かったです(笑)。

ゲリラ隊の面々は「俺たちは命を捨てている」だとか「失う物はなにもない」と言いますが、多分パブロは、この山の中で財産(馬)と家族(隊のメンバー)を得てしまったから、それを捨てられなくて、爆破工作に乗れなくなってしまったんだろうな、としみじみ感じました。
パブロ視点の小説を1回書いてみたいかも知れません。難易度は高いけれど……

宝塚宙組「誰がために鐘は鳴る」16:00回観劇。

今回の公演期間中唯一の2階A席(そもそも3回しか観る予定がないのですが)。
演出が平面的なので、二階で観たら退屈かも知れないと覚悟していたのですが、音の響きが良く、前回前評判ほど感心しなかったエル・ソルド@風莉じんがパコを諭す歌と、七瀬りりこのバレンシア幻想に聞き惚れました。勿論、祭りの歌手@百千糸は今日も絶好調でした。
また、照明が木漏れ日を表現していたり、ラストの光が集約するところなど、綺麗な動きをしていると思いました。

一週間前の観劇で気になった演出の一つに、伝令へ行くアンドレスとルチアが、舞台脇で鳴子を跨ぐ芝居をしてから本舞台へ移動し、その後歌いながら先程跨いだ鳴子があった筈の空間を通って銀橋へ行くという動きがありました。別の道のつもりなのでしょうが、特に背景が変わるなどの配慮もないので「鳴子はどうした!」と突っ込みたくなるものでした。
それが、今日は二人が銀橋へ出ず、本舞台に立ったまま歌ってそのまま逆の舞台袖へ引っ込む形に変更されていました。
東京公演が始まって折り返しを過ぎた今、まだ演出変更が入ることには驚きますが、変更されて本当に良かったです。
また、単に一度観て慣れただけかも知れませんが、前回テンポが悪いと感じたマドリード回想が巧く切り替わって見えたので、一幕の演出はさほど気にならなくなってきました。
二幕の結婚式の幻想とアグスティンの歌は相変わらず浮いてるのでがっかりしましたが、あるいは三回目はここも納得しちゃったりするんでしょうか。
変更かミスか分からなかったのは、橋の爆破直後アンセルモが死ぬシーンで、撃たれたエラディオの名を呼ぶピラールの声が聞こえたこと。前回は聞いた覚えがありません。偶々マイクが入ってしまったのか、演出変更で入れたのかな。
ここに関しては、別の音が聞こえると舞台上の芝居を阻害するので、マイクは入れず、注意していると微かに聞こえる程度の方が良いのではと思いました。

主要な役に関しては、印象はあまり変わらず。
今日はゲリラの面々になるべく注意して観劇したので、ゲリラ隊の面々の心境の変化などはだいぶ理解できました。風見鶏のように変わるパブロの言動も、第一日目にリーダーを降りる件以外は分かってきました。

以下、簡単に。
エル・ソルド隊が全滅するシーンで、今日は耐えられると思ったら、アンセルモ@珠洲春希が完全に真っ白になってしまった表情で膝を着く姿に泣かされました。
伝令を受け取るシーンは、思い切ってデュバル参謀長@天羽珠紀のみを観たところ、台詞がないところでも将軍との会話に合わせてしっかり演技していて、焦りや絶望が良く分かりました。
ラファエル@悠未ひろが、明るいムードメーカーから、どこか胡散臭い空気のあるジプシーに変化したように思います。原作だと下ネタ男なので、その辺を盛り込んで来たのかしら。
エラディオ@春風弥里は、いつも周りの人を伺っていて小物っぽい反面、一番パブロに性質は近いんじゃないかなと感じました。この人の「眼」が語る演技が好きです。
自分でも不思議ですが、やはりディエゴ@鳳樹いちの顔が好きですね。
そしてルピーノ@七海ひろきは男前だと再認識しました。こんなハンサムな彼に次回公演で女役を演らせて大丈夫なのでしょうか?
ロケットで気になる美男子を見付けました。最初、蒼羽りくだと思ったのですが、今回ロケットに参加していないようなので、七生眞希かな? まだ役が付きそうにないけれど、ちょっと注目したい下級生ですね。蒼羽自身は、結婚式の幻想で確認できました。
誰だか分かりませんでしたが、ブーケを獲得した男の子が、照れた顔で隣の女の子にあげているのが可愛かったです。

蘭寿とむ、天羽珠紀が若干声枯れするところがあり、重い芝居でがなる事もあるので大変だと思いますが、どんどん全体の演技が深まってる良い印象があったので、最後までこの調子をキープして頑張って欲しいです。

宝塚宙組「誰がために鐘は鳴る」VISA貸切16:00回観劇。

1階後方センターだったので、全体によく見えました。

今回は遠征しなかったので、ようやくMy初日です。
宝塚大劇場から演出が変わって良くなったらしいという噂を聞いて、若干期待値を上げて観てしまったのが、正直失敗だったかな……と思います。
演者の熱演に対して、演出・脚本が足並み揃わず上滑りしている印象を受けました。
二時間半の間に三回も泣いておいて、開口一番それか、と言われそうですね。
しかし演出を良くすれば、もっと良い作品になると言う歯痒さがあるので、ちょっと考えてみました。

案1.バレンシアの回想への入り方を変更
ピラールの「バレンシアは良かった!」の台詞の直後、回想開始。回想を破って、エル・ソルドが「じゃ、行ってくるぜ」と声を掛けて去って行く、と言う形の方がテンポが良いと思います。

案2.二幕冒頭の結婚式とアグスティンのソロをカット
突然始まる幻想シーンに、同行者は「山の中であんなドレス持ってたの?」と戸惑っていました。意味のないシーンで、むしろ一幕ラストの涙が吹っ飛ぶ内容なので、カットを要請します。
衣装替えの時間稼ぎと思われるアグスティンのソロも、唐突すぎるので不要。アグスティンには、別の歌を作れば良いと思います。取り敢えずの代案としては、三日目の夜にロバートとマリアを背景として「彼にならマリアを任せられる」と信頼を寄せる歌等いかがでしょうか。

案3.アンドレスの伝令にルチアを付いて行かせない
二人が雑談しながら進む為に、伝令の緊張感が失せていると思います。更に場面転換時の「アンドレスとルチア〜♪」と言うコーラスも、少々間が抜けていて、二回目に至っては笑いそうになって慌てました。
アンドレスには、銀橋で「伝令に出されて正直ホッとした」と言う心情を吐露しつつ自責するソロを作れば、見せ場にもなるので問題ない筈。

案4.負傷したロバートを引き摺るシーンで盆を回す
撃たれた現場からほんの数cmロバートを運んだだけで演技が進むので、折角熱演してるのに「そこに集まっていたら皆銃撃されるのでは?」と言う突っ込みが観客の頭を占めてしまいます。
別れや最終シーンの為に位置は舞台の真ん中のままにしますが、盆を回す事で景色を変え、場所を移したのだと思わせられるはず。

案5.BGMを入れる
無音の中で芝居させることが多いのですが、ミュージカルなのでもっと音楽の力に頼って良いと思いました。
この辺の、芝居シーンとミュージカルシーンが分離しているのが昭和演出なのでしょうか。

やってみたら今の方が良かったりするかも知れませんが、自分で演出を付けられるなら、こんな感じにしてみたいかな、と思います。
逆に、1幕のマリアの回想は巧い演出だと感じました。

以下は、役の感想です。
役が少ないので、1回観ただけでは語り辛く、メイン処だけです。

再び任務を果たして死ぬ軍人のロバート@大空祐飛。
格好良いのは私にとって特筆するまでもないことですが、白シャツ姿の美しさには参りました。
あと、パンフレットに載っている最後の機関銃を構えたアップを、何度も見返しています。一人のアップで見開きは珍しいですよね。でも確かにこの写真は、このサイズで載せたいと思う素晴らしさがあります。
有能で強い男が、マリアやアンセルモ等と二人でいるときの眼差しの優しさが好きです。
それにしても今回、「いちゃいちゃ」と言う擬音が聞こえそうなラブシーンの連発には驚きました。寝袋のシーンはオペラグラスが手放せません。

マリア@野々すみ花は、とにかく可愛い! トップになって初めての当たり役でないかと思います。等身大で、健気なのが堪らないですね。
もっとも、理屈で考えると、暴行された少女が男性に一目惚れして積極的に恋を打ち明けられるとは思えないのですが、どういうわけか理屈を越えた説得力があり、野々の底力を観ました。

難役のパブロ@星原美沙緒。私がこの役に当たったら、初日までに脱走していると思います。複雑な内面が良く出ていて感服しました。

花組トップが決定済のアグスティン@蘭寿とむは、ひとまとめにされがちなゲリラ隊の中で、やはり目立つオーラがありました。フィナーレの扱いはWトップかと思ったけれど、それも納得です。
しかし蘭寿に重く「俺もあの娘がずっと好きだった」と言われると、十数年の恋を横からかっさらったような罪悪感を感じるのですが、実は数ヶ月先に知り合っただけですよね(笑)。

アンドレス@北翔海莉は、一言で言うと地味。正直「この人ならもっと出来るはず」と言う信頼感と歯痒さがありました。
スターである以前に役者として巧いがゆえに、与えられた役が小さいと、その小ささに纏まってしまうのでしょうか。ダンスにも覇気を感じなかったので、少し心配です。体調不良などでなければ良いのですが。

原作の時点でかなり好印象だったアンセルモ@珠洲春希は、若いのに自然な老人演技で素晴らしいと思いました。
ロバートとの信頼関係も実は美味しいですよね。
あとは、サラ@鈴奈沙也が最上級の男に相応しい良い女でした。ホアキン@凪七瑠海は、相変わらず少年役ですが、良かったです。

フィナーレの三人銀橋渡りで、春風弥里の指先から迸って見える気迫に眼を奪われました。「銀ちゃんの恋」以来、ダンスの時に全力で魅せに来てる印象です。階段降りの順番にも感動しました。
細かいところでは、祭りの歌手@百千糸が上手いと思いました。今回に限って言えば、七瀬りりこより好きです。歌姫チームでは、全体的に純矢ちとせのキーが合ってない気がしました。

次回観劇は来週。今度はもう少し下級生の出番を予習してから観劇しようかな、と思っています。