宝塚宙組「誰がために鐘は鳴る」VISA貸切11:30回観劇。
まだ3回目なのですが、これで手持ちチケットは最後です。
約2週間前に初めて観た時は、正直「これをリピートするのは辛い……」と思ったのですが、二度三度と観る程に深まって面白くなって行きました。あと1回観ても良かったかな。
敵役が登場しない(回想以外)お芝居なので、メリハリに欠ける感はあるけれど、その分宙組と言うカンパニー全体が仲間になって一つの事業――作中は爆破工作であり、現実には公演――を成し遂げると言うまとまりがあったのが良い作用を生んだのかな、と思いました。
あと今日は、いつもだとマイクに入るか入らないかの声が割と聞こえて、細かい芝居まで見えて面白かったです。
とにかく一幕からガンガン泣いてしまいました。エル・ソルドがパコへ歌う「何故戦うのか」と言う歌で既に泣いてしまったのは、自分でも驚き。
それだけ揺さぶられたのは、役者の熱気の影響も大きく、一幕ラストのエル・ソルド隊全滅シーンでは、アグスティン@蘭寿とむの頬が、男泣きでがっつり濡れて光っていたし、二幕の別れのシーンでは、マリア@野々すみ花が泣きじゃくるあまり鼻水垂らしながらの熱演でした。ロバート@大空祐飛は、裏切り時に思わず激昂するシーンの芝居が、前回までは決定的な瞬間までも苛々し始めてるのがわかりましたが、今日は振り切れるまでは凄く抑制した感じに変わってましたね。前の演技の方が分かり易いけれど、今日の演技の方が「極めて冷静なインテリ」ではあるかな。
そのタフで冷静な男が、爆破成功後、マリアと再会した瞬間に顔がぱっと輝いたのが劇的でした。
先日まで控え目過ぎて歯痒かったアンドレス@北翔海莉が、ショー的なシーンでは役を捨ててスター性を表に出してきたように感じました。彼が本気で踊り出すと、下級生スターではやはり太刀打ちできませんね。
前回原作の雰囲気を纏いつつあると感じたラファエル@悠未ひろは、「殺しておけば良かったんだ」の台詞などに男の色気やエロスがあって、昼の情けない顔とまったく違う表情があって格好良かったです。さり気なく2度もマリアの肩を抱いてるのも、役得と言うか、美味しいですね。
以下は、前回までに触れなかったキャストを中心にざっと。
パコ@星吹彩翔は、12歳にしては成長し過ぎと思っていたのですが、やはり演技派だと思い知りました。やりすぎることはなく、でもキャラとして必要な印象付けをきちんとしてると思います。
ベソをかいたり頬を引っ張られるファニータ@藤咲えりが可愛過ぎて、毎回悶絶。「べちゃくちゃ喋ったりしない」と言う台詞回しが、実に「べちゃくちゃ」した感じで(笑)、上手いな〜と思いました。
ゲイロードホテルは、女性陣の衣装が気取っていて目の保養ですが、ドロレス@愛花ちさきはその中でも「高そうな女」感があって、それでいてロバートへの想いも伝わる情感があり、とても好きです。彼女は、短期間で随分美人になりましたね。
ルチア@すみれ乃麗は、ホアキンを嗜めるお姉さんぷりと、パブロ隊に駆け込んできたときの芝居が良かったです。特に、後者のシーンで私の涙腺を決壊させるのは、彼女の「早く行って!どうしたの、みんな!弟もいるのよ!」と言う下りだったりしました。
いつも二人がごっちゃになる歩兵@蒼羽りく&愛月ひかるも、最後なのでちゃんと確認しました。美形なのに役立たず感が漂う兵士っぷりが良かったです(笑)。
ゲリラ隊の面々は「俺たちは命を捨てている」だとか「失う物はなにもない」と言いますが、多分パブロは、この山の中で財産(馬)と家族(隊のメンバー)を得てしまったから、それを捨てられなくて、爆破工作に乗れなくなってしまったんだろうな、としみじみ感じました。
パブロ視点の小説を1回書いてみたいかも知れません。難易度は高いけれど……