文化大革命時代の中国を舞台にした青春小説「バルザックと小さな中国のお針子」。
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
1970年代初頭、「僕」と親友の羅は、反革命分子と見なされ山奥で再教育を受けることになった。そこで仕立屋の娘・小裁縫に恋をした二人は、禁書であるバルザックの小説を彼女に読み聞かせ啓蒙しようとする。やがて文学に感化された小裁縫は、村と二人を置いて都会へ出て行ってしまった。
中国人がフランス語で書き、それを日本語に訳した小説ですが、殆ど気になりません。一気に読んでしまいました。
文化大革命時代の作者の体験を基にしたお話だそうですが、不思議と軽妙な印象で、読み易いし面白かったです。
非常に悲惨な環境の話なのに、二人にはどこかユーモアがあり、人間ってどんな環境でも逞しく生きるものなんだな、と感じます。
特に、「僕」と親友・羅の二人が禁書を手に入れた辺りから素晴らしい躍動感があり、切望していた文学の世界が目の前に開けた二人の気持ちがこちらに伝わるようでした。
最後まで読み終えた時、まったく予想していなかった結末だったのですが、同時にこの奇妙な題名通りのお話だった!と感心しました。そのため、この感想から読もうと思われた方のために、今回はあらすじは隠しました。