M・W・ターナー「盗神伝1 ハミアテスの約束」

【あらすじ】
獄中の盗人ジェンは、ソウニス王から自由と引き換えにあるものを盗み出すよう命じられた。何を盗み出すのかも分からないまま、ジェンは助言者メイガスに連れられて旅立つ。

最初はいつも通りネタバレありで粗筋を書いていたのですが、話をすっきりさせると7割くらい面白さが消失する作品なので、今回はこれから読む方向けに伏せてみました。

中盤まで、主人公はなぜ掴まっていたのかという状況、本当に本人が言う程の腕前を持つ盗人なのかという設定、どこに何を盗みに行くのかという目的も分かりません。各国の状況や神話などが会話の中で少しずつ語られていくので、そこからどんな世界なのかを読み手自身が飲み込んでいく必要があります。
実用文では絶対にやらない、小説ならではの手法ですね。
冒頭は本当に右も左もわからない状況なので読み進めるのに苦労しましたが、奇妙な一行での旅に出た途中くらいから面白くなり、遺跡に挑む以降は惹き込まれて一気に読みました。

ファンタジーと言っても、魔法や魔物、亜人種は登場しません。
神話と神々が大きな影響力を持った存在として登場し、奇跡を起こしたと思われるシーンもありますが、それはギリシア神話的な「神々の気紛れ」で、喜ばしい事ではないと思わせる雰囲気が独特でした。

主人公ジェンは、登場シーンが牢獄の情けない状態ですし、実力を発揮するまでは立場を弁えず大口を叩いているようにも見えるのですが、意外と知的だったり脆いところや情があって、憎めないキャラクターでした。
分かりやすい伏線は大体検討がついたけれど、ジェンの素性だけは最後まで分かりませんでした。目的の為の遠回り具合を考えると、ちょっと腑に落ちなかったところもあります。
が、物語の運びやキャラクターのリアリティなど、大人が読んで面白い児童文学だと思いました。

コメント

  • コメントはまだありません。

コメント登録

  • コメントを入力してください。
登録フォーム
名前
メール
URL
コメント
閲覧制限
投稿キー
(スパム対策に 投稿キー を半角で入力してください)