宝塚宙組東京特別公演「ヴァレンチノ」初日を観劇。
東日本大震災により、本来予定していた全日程が中止になった公演です。今回、公演期間と稽古日の合間を縫って、振替公演が実際されました。
5ヶ月の時を超えて再び相見える「ヴァレンチノ」が楽しみ過ぎて、朝は5時に目が覚めました。ちなみに、公演は16時から(笑)。
初日なのに、舞台も客席も笑って泣いて、熱く盛り上がった2時間半でした。
客席が細かいネタも拾ってよく笑うので、1幕はコメディ色が強く出てきました。その分、2幕の人間ドラマも色濃くなった気がします。
1ヵ所、2幕パーティ会場でセットの一部が降下途中に曲がって設置できなくなるトラブルがありました。が、問題なく続行して安心しました。
ルディ@大空祐飛は、とにかく1幕の可愛らしさが反則的ですが、その若さが自然になった気がします。以降のシーンでもルディの感情が分かりやすくなり、脚本の軸がスッキリと見えてきました。
ジューン@野々すみ花は、梅田から大きく変わっていない印象ですが、こういった地に足の着いた役だと、演技力の高さを改めて実感します。ジョージからの電話を取ったまま客席に背中を向けるシーンでは、音も、台詞も、表情も、舞台上の共演者もなく、ただ背中で語る珠玉の演技を見ました。
デ・ソウル@悠未ひろは、1幕では登場した瞬間から笑われていましたが、2幕はガラリと雰囲気が硬質になって格好よかったです。クラブ21は、少しマイルドな表現に変わったでしょうか?
ジョージ@春風弥里は、明るくて優しくて面白くて良い奴な上に、ルディを温かく見詰める眼差しは包容力が溢れていて、もう満点を付けたい男。
ジューンとは大学でサークルが一緒だった、などと設定を勝手に妄想してしまいました。
ナターシャ@七海ひろきは、やはり迫力のある美人。
カーテンコール2回目のお辞儀だけ、ドレスを着ているのに男役のお辞儀をしていました。ちょっとしたうっかりだと思いますが、男役が染み付いているのだな、と逆に好印象でした。
ラスキー@寿つかさは、底知れない怖さが醸し出されていました。細かい所では、「ムッシュ・ボーケール」の撮影シーンでストップモーションになり、八百屋舞台の床が移動する間も微動しないバランス感覚に感動しました。
メロソープ@天羽珠紀は、前公演の休演から無事復帰したことに、まず安心しました。相変わらず歌もバッチリ、妖しい占い師でした。
ナジモヴァ@純矢ちとせは、はまり役。元男役の大きさを生かした配役だと思います。
ビーブ@妃宮さくらは、可愛らしさが増したような印象。退団予定を延ばしてこの公演に出演してくれたことに、心から感謝です。
鳳樹いちは、ジョニー役も台詞の間が巧くて名司会という感じですが、実は細かい出番で踊っている時が好きです。
蒼羽りくは、とにかく小芝居が多くて、芝居への意欲を感じました。今後、悪目立ちしないようにしつつ、この方向性で頑張って欲しいです。
星吹彩翔は、クラブ21のダンサーやフィナーレが格好良くて目を奪われました。結構良い位置で踊ってますよね。ファン役の女装も、意外とチャーミング。
光海舞人は、職にあぶれたエキストラ役が、侘しさの中にも気の良さそうな雰囲気があって、注目しました。
その他、30人しかいないとは思えないくらい舞台がホットで、全員が生き生きしていました。
主演挨拶では、公演中止による強制的な役との別れは、役者にとっても消化不良だったと正直な告白がありました。その言葉通り、この貴重な機会に、全力で「昇華」しようとしている気持ちが伝わってくる熱演です。
梅田DC初日に感じた伸び代を、目一杯埋めて持ってきた東京初日。でも客席からの熱く温かい拍手が、更に成長を促すのでは、と期待しています。