次回公演での退団者が発表され、惜し過ぎるメンバーに涙しつつ前回からの続きです。
しかし、じわじわとボディブローのように来る退団者発表ですな……。
【1幕3場 メトロ撮影所の入口】
エキストラに登録したルディだったが、なかなか採用してもらえない。
配役係は、まだ男役の声になっていないと思ったら、研究生2年目なのですね。蒼羽りくに似た面長の宝塚的美人の顔立ちなので、是非技術を磨いて頂きたいです。
観劇時は、猛烈なアピールをするエキストラ希望者たちに注目していましたが、DVDではルディの周辺がよく分かります。体は大きいのに気が弱いらしい女エキストラ(風馬翔の女装)に場所を譲ってあげたり、女性の役の募集になるとアピールするように発破をかけている姿が見られました。女性に優しい辺りが、とてもルディらしいです。
細かい所では、霊魂役の時にルディも演技でアピールして、それを見ていたエキストラが次に老人を演って役を獲っていたのですね。ルディ、発想は良かったのに運がないなぁ。
【1幕4場 ジューン・マシスのバンガロー】
空腹に耐えかねたルディは、ある家のオレンジの枝を手折り、脚本家ジューンと出会う。ジューンは、ルディが制作中の映画「黙示録の四騎士」のジュリオ役に必要な条件を備えている事に気付き、カメラテストを受けるよう勧める。
前場の暗転時の音楽がそのままラジオ放送になる見事な繋ぎ。単に繋ぎというだけでなく、ジューンが物を書く時に音楽を聴くタイプだと言うことが、後の伏線になっているのが素晴らしいと思います。
DVDのアップ映像で観ていると、ルディの下手な嘘を聞いて、ジューンの口元がむずむずしてるのが面白いです。
ジューンは、宝塚歌劇では珍しい年上のヒロインですが、大人の女性としてちゃんと魅力的に表現されていて好感が持てます。年上の余裕を吹かしながら、ルディを可愛く思って見守っている暖かみがあり、更に恋してちょっぴり浮かれる可憐さが絶妙の塩梅ですね。物書きの端くれとしては、ルディと言う存在にインスパイアされると直ぐタイプライターに向かう辺りに「これぞ物書き!」とニヤリとしました。
一人残されて、ルディがタイプライターに興味を示すシーンは、東京では部屋の中を見回す演技が付け加えられて、より自然になっていました。地味な変更ですけれど、これによって好奇心旺盛でやんちゃな感じがより強くなっていたと思います。
【1幕5場 ジョージ・ウルマンのオフィス】
ジューンからメトロ映画の宣伝課長ジョージを紹介されたルディは、ルドルフ・ヴァレンチノと言う芸名を与えられ、新人俳優に仕立て上げられる。
冒頭は、ジョージが電話で一人芝居。この舞台では、電話口で一人芝居するシーンが何度もあり、しかもそれを演じる全員が巧いので感心しました。ここの場合、ジョージの反応から電話口の向こうのジューンが浮かれてる感じが透けて見えて、楽しくなってきます。
ジョージからジューンへの愛情は、ジューンが巧みに躱してしまうので、コメディ扱いになっていますけれど、この作品の重要ポイントだと思います。つまり、ジョージという最上級の「いい男」が惚れ込んでいる相手だ、と言う理由で、この先の展開でジューンがナターシャに破れても、彼女が「いい女」であり続けるのです。
ちなみに、ジョージは後にジューンを「お母さん」と揶揄するけれど、彼が「ルドルフ・ヴァレンチノ」の名付け親だと言うことを考えると、ルディにとっては父親みたいなものですよね。
ここでは生着替えに加えて髪型の変更もあります。音楽に合わせ進めないといけないわけですが、間に合わなかったらどうなるのでしょう? 生オケなら安心なのですけれどね。そして、変身させられる時の「生まれも育ちも消し去ってしまう」と言うフレーズが、実はナターシャとルディの類似性を示唆していたことに気付きました。
演出に一つだけ文句をつけるとしたら、「開けゴマ」を言い終わってから扉を開けて欲しいなぁと思います。