東京公演までに書き終わると言う希望的観測が、少し現実になりました。

【2幕3場C クラブ21】
もぐり酒場で再会するルディとジョージ。ルディは過去の裏切りを謝罪し、もう一度3人で映画を作りたいと言う。その時、酒場のショーでルディを中傷する新聞記事が紹介され、ルディは激しいショックを受ける。

クラブの歌手が百千糸であることに、DVDで初めて気付きました。「誰がために鐘は鳴る」での軽やかな歌手の印象が鮮やかだった分、こんなムーディな雰囲気も出せるとは意外で、驚きました。
ルディは映画作りの夢を語りますが、公演が進んでいくごとに、彼が映画監督に転身して成功するとはとても思えなくて、どんどん空虚な希望だけが広がっているように感じたのが面白かったです。
大空祐飛という役者自身は、コツコツと積み上げていくクレバーな印象で、実際に演出的なセンスがあると言う話も聞きます。故に役者本人とダブらせると、映画監督になると言う夢に現実味があったのですが……。公演が進んでルディという役が深まるほどに、彼には他の道を歩む術がなくなっていったのかもしれません。

【2幕4場 記者会見場】
本心を曝け出しても記者からは取り合われず、ファンからは映画の登場人物であることを求められる。本名のロドルフォを愛してくれる者はいない──

天羽珠紀が「ヴァレンチノ」でなにを演じていたか思い出そうとすると、私の場合、1幕の占師メロソープではなく、この記者会見場の名もなき記者がまず脳裏に蘇ります。
たった一言の台詞なのに伝わってくる、独特の厭らしさ。取材対象をどう思っているかよく分かるし、彼が書くだろう記事の内容まで想像させます。
続くヘレン・ローズも、こちらは悪意なくルディを傷付け、一層の孤独感を与えてきます。
虚構の「ルドルフ・ヴァレンチノ」としてしか存在を許されない事実を畳み掛ける脚本に、震撼します。
それでも──ルディは絶望していないのですよね。

余談ですが。
ルディとジョージが同じような衣装を着て並ぶと、ジョージの身長の高さと、ルディの頭の小ささに改めて吃驚します。後者は髪型も影響しているかな。

【2幕5場 S&G出版社受付】
ジューンを探し出したジョージは、ルディが会いたがっていることを伝え、新作「シークの息子」の試写会に招待する。

フランソワーズ・スコット(ジューン)を訪ねるジョージですが、受付嬢の応対には疑問が残ります。作者の個人情報を探る相手には、もっと慎重に対処すべきですし、そもそもいつ出社するかなどの情報を漏らしてはいけないと思うのですよ。それとも、個人情報保護法などがなかった時代は、こんなものだったのかしら。
相手を思い遣りながらも本音で話せているジューンとジョージは、男と女であっても本当に良い友人同士だったのだと想います。
ところで、何度も見返している内に突然気付きましたが、ここでジョージに電話番号を教えたことが、10場の展開に繋がるのですね。実に無駄のない脚本です。

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