田中ロミオ「AURA〜魔竜院光牙最後の戦い〜」
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
高校に進学した佐藤一郎のクラスには、自分を魔女だと妄想しコスプレで登校する佐藤良子が在籍していた。周囲から虐められた良子は、妄想世界に「帰る」ための投身自殺を図る。かつて己も「中二病」だった一郎は、自分の過去を告白して良子を押し止め、2人は「普通」の人間として日常を過ごす戦いに挑むことを約束する。
日常からファンタジーに片足突っ込む話なのかと思いつつ読んだら、真っ当な現実世界物でした。
所謂「中二病」というものを嫌と言うほど学ばされますね。勿論、現実にこんな痛々しい妄想集団がいるとは思っていません。……いないよね?
「妄想戦士」たちは、他人の話を聞かず否定する癖に、自分を貫き通す勇気もないあたりが不愉快だったので、彼等を軽蔑している一郎には共感しました。
結局、他人より偉い「特別な自分」でありたいという心理なんですよね。彼等は他人の立場を思うとか、共感するとか、そういう人付き合いを円滑に進める為の努力をしておらず、自分本位だと思う。もっとも、一郎ほどオタク性を徹底的に隠さなくても、普通の人付き合いはできると思いますけれどね。
「普通を受け入れよう」というメッセージが良かっただけに、物語のラストは個人的に不満でした。
オチが欲しかったんだとしても、アクセサリー職人の久米さんだけで充分だったと思います。
それにしても、二つ名や美麗な戦闘描写にむず痒くなるプロローグが、あの伏線だったとは!
教室内序列(スクールカースト)という概念は本作で初めて知りました。私の学生時代には、こういう言葉はなかったかな。でも、そういう「グループ」や「○○キャラ」「序列」は存在していました。
イジメシーンもありますが、イジメ側の「女王蜂」大島ユミナの理屈も分かるので、そんなに残酷には感じなかったですね。
なお、本作の出版は小学館ガガガ文庫ですが、電撃文庫(ブギーポップ)や角川文庫(ロードス島戦記)など、他社の作品名が使われているので、ちょっと驚きました。