プーシキン著 池田健太郎訳「オネーギン」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
放蕩児オネーギンは、純真な田舎娘タチアーナから愛の告白を受ける。オネーギンは我が身を省みて「他に相応しい人が現れる」と彼女を拒絶する。数年後、公爵夫人となったタチアーナと再会したオネーギンは、社交界の尊敬を受ける彼女に恋し気が狂う程になるが、成長したタチアーナは自分を律し彼を拒絶する。

プーシキンの代表作。
寡聞にして「韻文小説」というものに初めて触れたのですが、要するに韻文で書かれている小説のことですよね。それが散文に訳されている段階で、本作の本質はほとんど失われているのかも知れません。
はっきり申し上げると、実に読みにくい本でした。
約180ページしかない本文に、大変な時間が掛かりました。これまでの読書体験で最も読み進めることに苦労した作品です。
ストーリーはシンプルなのですが、語り手であるプーシキン自身の感想や揶揄が頻繁に入り、話があちらこちらに動くので披露しました。

有名な作品である為に、簡単な粗筋は知っていました。そのため、タチアーナの告白はもっと酷い振られ方をするのだと思っていましたが、拒絶する理由が分かり易く、とても誠実な振り方だと思いました。そのため、私はタチアーナが延々引き摺るほどショックを受けたことに驚きました。
まぁ、一度は毅然と振っておきながら、人妻に切々と恋文を送るオネーギンも度し難い人物だと思いましたが……。

この岩波文庫版には、訳者の後記と付録として二篇の文章が収録されています。
その内の一篇「翻訳仕事から」は個人的に大変興味深く読みました。

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