坂木司著「和菓子のアン」

デパ地下にある菓子店の日常と小さな謎を描いた「日常ミステリ」短編集。
タイトルが秀逸だと思い、読んでみました。“あん”や“餡”だったら当たり前。けれど“アン”だと、「赤毛のアン」を彷彿とさせられて、青春小説の要素もあるのかな?と興味を惹かれます。
肝心の物語自体は、おおよそ想定した通りに淡々と進むのですが、「和菓子が食べたくなる」ということは、お仕事小説として素晴らしい内容ではないでしょうか。また、デパート従業員の仕事という、日常から非常に近いところにある非日常の面白さも良かったです。
タイプとしては、「配達あかずきん」にとても良く似ていますが、「事件」の規模は本作の方が更に小さく、ほっこりした内容です。

主人公の杏子は、甘い物にダラしない性格と外見ではあるものの、向上心とぽっちゃり女子にとって最も重要な“愛嬌”があって、憎めないキャラクター。
その他の登場人物は割と類型的ですが、悪人はいないので読んでいて気持ちが良かったです。

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