石川博品著「耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
本地民レイチは、親のコネで、連邦に連なる辺境国の王族が通う全寮制学校に入学する。学内では、本地民が運営する委員会と王国民が運営する防衛隊が対立していたが、レイチはクラスメイトである王国民ネルリ等と交流し、両者の仲を一歩改善した……かもしれない。

作者デビュー作にして、第10回エンターブレインえんため大賞小説部門優秀賞受賞作品。
本作を出版しようと考えた編集者は偉大だと思う、人を選ぶライトノベル。

ここまで僕の話、一切なし。
そりゃあ確かに村の児童委員は持ち回りだったから実績としてカウントされなくても仕方がない。でも、他にも訊くべきことはたくさんあるはずだ。たとえば、「あなたは脳内でどんなアルバイトをしていますか?」と問われれば、「はい、僕目当ての女の子で満員のアイスクリームパーラーで給仕をしています」とハキハキ答えてみせる。そんなアルバイトで貯めたお金で天体望遠鏡を買おうかそれとも無線機にしようか思案していると、委員たちは僕らを無視して話し合いを始めた。

万事この調子で、変態主人公レイチによるエッチな妄想と2ch系のオタク用語が入り交じった一人称で綴られます。
最初の内は読み難くて仕方ないのですが、レイチの妄想を適当に斜め読みでやり過ごせるようになると、ごく普通にクラスメイトとの親交や本地民と王国民の対立など、ソヴィエト共産圏風の全体主義下にある学校らしい独特の在り方が分かって来ました。
ただ、私には根本的な面白さがイマイチ良く分かりませんでした。一人称なのに、主人公の考えていることが読者にストレートに開示されない構造が面白いのかなと思ったけれど、短気な私には間怠っこしさの方が上回りました。

ソ連風の全体主義の世界における学園青春劇という、非常に独特な設定と、無二の作風から、合う合わないは別として面白い読書体験ではあります。
ケータイ小説のような内容の文章を「古文」として勉強している下りは凄い笑えました。

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