エリオット・エンゲル著 藤岡啓介訳「世界でいちばん面白い英米文学講義 巨匠たちの知られざる人生」

英米文学の著名な作家12人について、生い立ちや著作が出来た背景などの裏話を語った本。講義を受けているような印象を抱きながら読んだのですが、訳者あとがきの付記に、講演のテープを起こしたものだと書かれていました。
世界でいちばん面白い!……かどうかは、判定不能ですが、各作家に対して勉強になる内容が幾つかあり、楽しく読めました。
例えば、ディケンズが「同じ本を読者に三回売った」手法は、作家と言うより商売人だな、と膝を打ちました。
過去の作家たちの有様を見て来たかのように話す語り口が軽妙ですが、近代の作家・フィッツジェラルドとヘミングウェイについては、ほとんど生涯を語っているだけで、目新しい情報がなかったのが残念でした。

最後に、少し驚いたことを。
ジェイン・オースティンの章で、彼女は英米文学史における初の大女流作家だと語られています。そもそも作家を表す author は authority(権威者)を語源としていて、つまり男性のことだったと言うのです。
英米における文学テーマは戦争、女性への愛、政治、宗教であって、女性が進出する余地がなかったのですね。
日本では、古代から紫式部や清少納言といった女性作家が活躍していたことと比較すると、面白いものだと思いました。

コメント

  • コメントはまだありません。

コメント登録

  • コメントを入力してください。
登録フォーム
名前
メール
URL
コメント
閲覧制限
投稿キー
(スパム対策に 投稿キー を半角で入力してください)