ジャック・リッチー著「10ドルだって大金だ」
星新一のショートショートを読んでいるような、エスプリの効いた短編ミステリー14編。
全体的にシンプル且つ軽妙で、ミステリーといっても読者が推理する要素はあまりなく、プロットで読ませる感じです。
犯人はあまり思い悩んだりすることなく、気軽に殺人するので、カラっとした空気感があります。
解説の「読んでいるあいだはひたすら愉しく面白く、読み終えた後には見事に何も残らない」という説明が、まさにその通りでした。
あまり好みでない話もありましたが、短編集なので、幅があるのは当然ですよね。
私が面白いと思ったのは、「誰が貴婦人を手に入れたか」。大掛かりな仕掛けを作っておきながら、名画を盗まず金稼ぎに生かすという現実的な犯人が良かったです。
妻殺しの「とっておきの場所」はアイデアの勝利。
でも、表題作に相応しいのはやはり「10ドルだって大金だ」だと思いました。