川原礫著「ソード・アート・オンライン〈1〉アインクラッド」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
バーチャルゲーム・VRMMO「ソードアート・オンライン(SAO)」は、サービス初日に、開発者・茅場晶彦の手によってログアウト不能の“デスゲーム”になった。2年後、プレイヤーの1人・キリトは、SAOで知り合った恋人アスナと共にゲーム世界からの脱出=クリアを目指す。協力プレイヤーの中に潜む茅場晶彦に気付いたキリトは、一騎打ちに挑んで勝利し、現実世界へ帰還する。現実に戻ったキリトは、現実のアスナを探し始める。

ここでいう“デスゲーム”とは、下記の状態を指します。

  • ゲーム内の死が現実の死になる。
  • プレイヤーが任意にゲームから脱出できない。

現代版「クリス・クロス 混沌の魔王」ですね。
ただ、「クリス・クロス」の世界ダンジョントライアルからは脱出したかったけれど、SAOの世界アインクラッドは、意外と楽しそうに感じました。
システム面に結婚・持ち家・生産スキルなど今風のオンラインゲーム要素、シナリオに美少女との恋愛という甘さが加わっているため、デスゲームの殺伐・緊張感が緩和されているのです。なんせ、釣りをしているプレイヤーがいるくらいですからね。自分がSAOに閉じ込められたら、誰かがクリアしてくれることを期待しながら、街に籠ってひたすら職人プレイに励みそう。そんな想像ができるくらい、良くも悪くも甘さがあります。
その甘さは物語の結末にも現れていて、相討ちしたキリトや、その直前にゲーム内死亡を迎えたアスナも生き延びる点に、ハッキリ言ってしまえばご都合主義を感じました。
でも、私はこういう甘さは好きです。
人気があることに納得できる面白さでした。ただ、一冊で巧く纏まっているので、続刊には逆に興味が湧かないかな。

ところで、茅場晶彦はずっとアインクラッド内にいたのでしょうか?
クリアまで2年間という長い時間が掛かっている分、茅場晶彦本人の体はどうなっていたのか、外部から助けようとする動きはなかったのかなど、少し気になってしまいますね。

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